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アメリカ・ワシントンD.Cにあるスミソニアン国立アジア美術館で、日本美術に焦点をあてた展覧会とパブリックプログラムが2026年後半まで開催中だ。日本美術人気の高いアメリカで、現代的な視点を取り入れながら新たな魅力を掘り起こす試みとして注目されている。
同館は、実業家のチャールズ・L・フリーアが寄贈したコレクションをもとに、1923年にフリーア美術館として設立。4万6000点以上と、北米最大級かつ最も権威あるアジア美術のコレクションを誇り、ボストン美術館とならぶ〝東洋美術の殿堂〟として知られる。うち1万5千点が日本の絵画や工芸品、書などで占められ、コレクションの中核となっている。
現代的な関心と共鳴
日本美術のキュレーター、フランク・フェルテンズ氏は同館のコレクションにおける日本美術の重要性にふれつつ、アメリカにおける日本美術の受容について「日本文化のさまざまな部分が人気を博してきた。明治時代にはジャポニスムが隆盛を極め、戦後数十年の欧米では禅が海外における日本受容のもうひとつの主要な側面となった。冷戦後の数十年から現在に至るまで、漫画やアニメは多くのアメリカ人にとって、日本についてより深く知り、より広く日本の文化に関わるための入り口になることが多い」と分析する。 昨年開館から100周年を迎えた同館では、コレクションを再構築した。「今回、日本の常設展示室を新しく生まれ変わらせることで、当館のコレクションの重要な部分に新たな光を当て、現代的な関心と直接共鳴するような枠組みを作り上げた」とフェルテンズ氏。日本の国民病ともいえる〝花粉症〟がなぜ生まれるに至ったかなどを、歴史的な視点から解説するなど、同館ならではのアプローチがユニークだ。
10年ぶりに公開 名品「千種」
再構築したコレクションをお披露目するコレクション展では、名品とされる茶つぼ「千種」が10年ぶりに公開される。シャーリー・Z・ジョンソン日本美術(※同館に寄贈されたシャーリー・Z・ジョンソン氏による日本近現代金工作品コレクション)アシスタントキュレーターのソル・ジョン氏は「時代を越えて異なる日本美術分野を結ぶテーマが可能にした、ちょっと意外な作品の組み合わせ・配置に注目してほしい。例えば『環境の変化』という切り口の展示室には長野県茅野市尖石から発掘された縄文時代の土器と共に、樹木を描いた17世紀中ごろ(江戸時代初期)の琳派の屏風を楽しめる。これまで当館で公開されてきた日本美術とはちょっと違う一面をご覧いただければ」とアピールする。
また、「Japan in Focus」と題した取り組みでは、5つの展示を軸に、金工や陶芸、版画など、それぞれの分野における制作方法を紐解いてゆく。
複数年にわたって開催されるパブリックプログラムは、日本への洞察を深め、同時にアメリカとの関わりや関係性理解を促すことを目指す。参加者は触覚、味覚、嗅覚などを通し日本文化を体験してゆくという。一部のプログラムはオンラインでも参加可能。詳細は同館公式HPから。
筆者:塩塚夢(産経新聞)
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