令和7年春闘が始まった。幅広い品目で価格上昇が続く中で、個人消費の拡大を通じた自律的な景気回復を図るには物価上昇を超える賃上げが欠かせない。
Keidanren Tokura and Rengo Tomoko Yoshino

会談する経団連の十倉雅和会長(左)と連合の芳野友子会長=1月22日午前、東京都千代田区

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令和7年春闘が始まった。

幅広い品目で価格上昇が続く中で、個人消費の拡大を通じた自律的な景気回復を図るには物価上昇を超える賃上げが欠かせない。

労使は今春闘が日本経済の先行きを左右するとの認識のもと、緊張感をもって交渉に臨んでもらいたい。

すでに大手企業の経営者の中には、昨年並みの高水準の賃上げを表明する動きも出ている。だが、物価上昇を上回る賃上げを広く浸透させるには雇用の7割を占める中小企業が賃上げを継続できる環境が必要だ。

中小企業が生産性向上などの自助努力によって業績改善に努め、賃上げ原資を確保すべきであるのは当然である。同時に、原材料費や労務費などで上昇した中小企業のコストを取引価格に適正に転嫁することが求められる。

過去2年間続いた高水準の賃上げを継続するために、中小企業の賃上げが重要であるとの認識で労使は一致している。

記者会見する連合の芳野友子会長(左)ら=1月19日午後、東京都千代田区

連合は今春闘の賃上げ目標を昨年と同水準となる「5%以上」に据え置いたが、中小企業については「6%以上」とすることを決めた。連合傘下の労組は昨春闘で33年ぶりとなる平均5・10%という高水準の賃上げを達成したものの、中小は4・45%にとどまり、大手との格差が広がったとの反省がある。

経団連は今春闘の経営側の指針に「大企業や発注企業側においては、適正な価格転嫁だけでなく、中小企業の取り組み支援や連携強化を積極的に推進するといったパラダイムシフト(劇的な変化)が求められる」と明記し、会員企業の経営者に意識改革を促した。

中小企業の賃上げ促進を重要課題に掲げる政府は、価格転嫁を促す下請法改正案を24日召集の通常国会に提出する。価格転嫁の実効性を高めるには、政府による取引状況の監視をさらに強めることも必要になろう。

物価上昇を考慮した実質賃金は昨年6月に27カ月ぶりに上昇に転じたものの、8月以降はマイナスが続く。この状況を改善しなければ、成長と分配の好循環は実現できまい。

長年続いたデフレマインドから脱するには、賃金が上昇することが当たり前だという認識を広く共有する必要がある。今春闘をその契機としたい。

2025年1月24日付産経新聞【主張】を転載しています

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