衆院予算委員会で答弁する高市早苗首相=11月7日、国会内(春名中撮影)
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高市早苗首相は11月の国会審議で、台湾有事が集団的自衛権の行使を可能にする「存立危機事態」となり得ると答弁し、これに中国が反発して経済的威圧を強めている。米国では安全保障の現実を直視した発言として米政府に見習うよう促す声があった一方、答弁は軽率だったと批判する論調もあった。韓国でも高市首相の経験不足が問題発言を生み出したという見方があり、日中両国の対立に巻き込まれることへの懸念が根強い。
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米国 「明確」「慎重さ欠く」賛否
台湾有事が「存立危機事態」になり得るという高市早苗首相の答弁は、中国が台湾を封鎖し、これに介入した米軍が攻撃を受けるという前提を示していた。だが、米メディアでは、台湾が海上封鎖されれば、すぐさま日本が軍事介入することを想定した報道が目立った。それでも首相答弁を評価する声がある一方、答弁内容に理解を示しつつも答弁に臨む姿勢は慎重さが欠けていたとして批判的な論調もあった。
ハドソン研究所のマイルズ・ユー上級研究員は11月24日のワシントン・タイムズ紙で、台湾が占拠されれば、中国が日本の南側を支配することになると指摘。日本にとって極めて深刻な安全保障上の脅威になるとして、高市首相の国会答弁は妥当だとした。
米国では台湾問題を巡り、とかく歴史的経緯や台湾の民主主義を守るかどうかといった論点が前面に出やすい。ユー氏は、「台湾が陥落すれば日本の安全保障も崩壊する」という現実を高市首相は見据えており、「米国は、高市首相のような戦略的明確さを必要としている」と強調した。
高市首相の答弁内容に理解を示した点では、国際政治学者のウォルター・ラッセル・ミード氏も同様だ。ミード氏は17日のウォールストリート・ジャーナル紙への寄稿で、中国が武力を用いて台湾を強制的に支配下に置く事態となれば、日本の存立を脅かす存立危機事態に該当し、「日本の武力による対応」のきっかけとなる可能性があると指摘。自衛隊が「米国など同盟国を支援することは十分あり得る」と予想した。
筆者:岡田美月、時吉達也(産経新聞)
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2025年12月1日産経ニュース【世界の論点】より
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