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「第93期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負」第2局の対局室で検分する藤井聡太棋聖(左)と永瀬拓矢王座=2022年6月14日、新潟市の岩室温泉「高島屋」(松本健吾撮影)

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広大な越後平野の一角で静かなたたずまいをみせる岩室温泉(新潟市西蒲区)が、国内外の観光客に注目されている。国内でも珍しい黒湯の温泉で、インバウンド(訪日外国人客)にも人気だ。また、将棋の藤井聡太七冠が令和4年から3年連続、岩室温泉で対局しており、ファンが全国から訪れている。

岩室温泉の観光案内施設「いわむろや」の足湯は湯が黒い。湯面に近い壁面も黒くなっている=新潟市西蒲区(本田賢一撮影)

北陸自動車道の巻潟東インターチェンジを降り、田園地帯の道を20分ほど走ると、岩室温泉に着く。温泉街と住宅街が一緒になったような街並みはとてものどかで、通りかかった地元の人が「こんにちは」と気軽に声をかけてくる。

温泉地としての歴史は古く、江戸時代中期の正徳3(1713)年、庄屋の夢の中に白髪の老翁が出てきて、「村はずれの老いた松の下の霊泉に浴すれば、諸病和らぐ」と告げたのが始まりとされる。お告げの場所を探すと、一羽のカリが温泉で傷を癒やしていたことから、源泉を発見したとの言い伝えがある。

岩室温泉に着いたらまず訪ねたいのが、観光案内施設「いわむろや」だ。観光情報の提供や地元名産品の販売のほか、岩室温泉の特徴である黒湯の足湯を無料体験できる。

黒湯の温泉地は国内でも数えるほどしかないといわれる。岩室温泉では、硫黄と鉄が結合して「硫化鉄」となり、その黒くて細かい微粒子によって、湯が黒っぽくなる。「美肌の湯」として知られるほか、神経痛や慢性消化器病、冷え性などに効能があるとされる。

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温泉ソムリエ推奨の湯

グラビアアイドルで温泉ソムリエでもある高橋凛さん(34)は9月に岩室温泉のイベントに参加した際、「黒湯は肌触りがとても優しく、心の芯から癒やされる」と解説。美肌効果を高める方法として、「黒湯から上がって10分以内に保湿クリームを塗る」ことを推奨していた。

気軽に温泉を楽しみたい人には日帰り温泉がお勧めだ。足湯もある「いわむろや」から徒歩約5分のところに温泉旅館「越後平野と弥彦連山一望の宿 穂々」があり、レンタルのタオルとバスタオルが付いて1353円で露天風呂などを楽しめる。虫の声を聞きながら入る温泉は、なんとも風情があった。

岩室温泉では最近インバウンドも増えている。老舗旅館「高志の宿 高島屋」の女将(おかみ)、高島基子さん(60)は「海外からのお客さまが黒湯に入ると『インタレスティング(興味深い)』と喜んでくださいます」と明かす。

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将棋ファンも訪れる

その高島屋は将棋のタイトル戦「棋聖戦五番勝負」の対局会場にこれまで26回選ばれている。藤井棋聖=竜王・名人・王位・王座・棋王・王将の七冠=は令和4年から3年連続で高島屋で対局しており、観光客が高島屋の前でスマートフォンを手に記念撮影する姿をよく見かける。

棋聖戦五番勝負の対局会場となった「高志の宿 高島屋」=新潟市西蒲区岩室温泉(本田賢一撮影)

岩室温泉がある新潟市西蒲区は、色とりどりの新鮮な地元産野菜をブランド化した「にしかん・なないろ野菜」が有名だ。白いナスやピンクのカブ、さまざまな色のトマト、ピーマンなどが約30種類ある。なないろ野菜は、藤井棋聖が高島屋に宿泊した際の食事にも出されたことがある。

この時期、紅葉を楽しんだあとに黒湯で癒やされるのもいいかもしれない。

「高志の宿 高島屋」の高島基子女将。サイン帳には、藤井聡太棋聖が2023年書き残した詰め将棋が描かれている=新潟市西蒲区岩室温泉(本田賢一撮影)

筆者:本田賢一(産経新聞)

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■岩室温泉 新潟市の奥座敷として知られる同市西蒲区にある温泉地。パワースポットとして人気の弥彦神社の参拝拠点にもなっている。上越新幹線燕三条駅からJR弥彦線と越後線を乗り継ぎ岩室駅で下車、同駅から車で約10分。北陸自動車道巻潟東ICから約20分。

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