グリーン車を備えたJR東日本の快速電車。運賃を値上げするJR東は多様なサービスで差別化をはかる
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JR東日本が3月14日から運賃を値上げした。昭和62年の国鉄民営化以降、同社では消費税率の引き上げなどを除いて初の本格的値上げである。
値上げ率は普通運賃が7・8%、通勤定期が12%で、前日の13日には、旧料金で定期券を買おうとする利用客で各駅のみどりの窓口は大混雑した。
国鉄時代の昭和61年に値上げしてから、実に40年間にわたり運賃水準を維持し続けてきた。今回の値上げは、急激な人件費や資材費高騰などを勘案すればやむを得ないだろう。
JR発足後の平成9年、国土交通省は、過度な値上げを抑える目的で総括原価方式を導入した。列車運行に必要な人件費や修繕費などの経費に利潤を上乗せした上、営業外収益を差し引いて運賃上限を決定する仕組みである。これによりJR東日本など本州3社は長く運賃改定ができなかった。

ところがコロナ禍によってJR各社の輸送量は激減し、特にJR東日本は、令和2年度に5200億円もの営業赤字を計上した。総括原価方式の見直しを求める声が鉄道各社から強まり、6年4月に国土交通省は「持続可能な運営」ができるよう算定基準を大幅に見直した。JR東日本の運賃改定が認められたのもその一環だ。
ただ、今後の安易な値上げは、厳に慎むべきである。
今回の平均値上げ率は7・1%だったが、山手線内のアップ率は16・4%で、東京―新宿間は210円から260円と23・8%も上がる。利用客が格段に多く、代替のきかない都心部で確実に収益を上げようという戦略が透けてみえる。片道601キロ以上を往復すれば10%割引していた往復乗車券が廃止されたのもサービスダウンだ。
運賃は国鉄時代の昭和51年、オイルショックなどの影響を受けて50%超も値上げされた。以来毎年のように値上げを繰り返して乗客離れを起こし、民営化に追い込まれた過去の教訓を忘れてはならない。
同社では昨年から今年にかけ、人為的ミスなどで電車が長時間にわたってストップするなど重大事故が頻発している。年間880億円とみられる値上げによる増収分は、安全対策に重点的に使ってもらいたい。鉄道会社の原点に戻ることが、信頼回復の第一歩である。
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2026年3月14日付産経新聞【主張】を転載しています
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