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[Asia’s Next Page] Missing a Common Synergy: The India-Japan Divide on Ukraine
([Asia’s Next Page] 共通のシナジーがない 日印、ウクライナ問題で分裂)
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「日本はいずれ、ロシアから北方領土を取り戻すことができるぞ」
携帯電話の向こうからこんな嬉しそうな笑い声が響いた。相手は、ウクライナ南部の激戦地ヘルソンでロシア軍と戦うウクライナ人オレグさんだ。先週、筆者(内藤)に電話で現地の様子や戦況を伝えてきた。
彼とは2014年2月、同国の親露派ヤヌコビッチ政権を崩壊に導いた首都キーウ(キエフ)での「マイダン革命」の取材で知り合った。ロシアはその後、ウクライナ南部のクリミア半島を「占領」し、併合した。その際も取材の協力をしてくれた。それ以来の付き合いである。
同国の軍事に詳しい技術者で、ビジネスマンのオレグさんも、今は軍服に身を包み、銃を手に侵略者と戦う戦士である。
ロシア軍の侵攻が始まった今年2月下旬、欧米諸国や日本の専門家たちは、圧倒的な軍事力のロシアにウクライナの敗北は時間の問題だとみていたが、彼はその際も「ロシアは膨大な犠牲者を出し、勝利することはできない」と分析していた。いま、まさにそれが現実のものとなりつつある。
ウクライナでは、東部の親露派支配地域でロシア軍に対する激しい反撃が始まっている。南部でも間もなく大規模な反攻作戦が始まり、ロシアを押し戻して領土を奪還するという。
ただ、ロシアが日本の首相らを入国禁止にする現状で、北方領土が返還されるとの予測はあまりに唐突なように感じたが、オレグさんは大真面目だった。
曰く、経済的にも軍事的にも「強い」ロシアが日本に領土返還で譲歩することはない。だが、今回の戦争にロシアが負け、内政や経済が混乱し弱体化したときこそが、日本にとって領土奪還のチャンスだという。確かにそうである。正しい分析といえるだろう。
そのウクライナ問題をめぐって、世界は分断状態にある。強権的な全体主義国家、中国がロシア側につくことは当初から予想されていたが、アジアの民主主義の大国とされるインドがロシア非難を避け、欧米や日本と一線を画しているのは由々しき事態だ。英語ニュース・オピニオンサイト「JAPAN Forward」(JF)は、そんなインドに関する記事を数多く掲載している。
上の英文(日本語訳)は最近掲載された記事の見出しである。記事は、ストックホルムセンター南アジア・インド太平洋責任者のジャガンナート・パンダ博士が執筆。インドが先月、日本からの人道支援物資を載せた自衛隊機の着陸を拒否したり、露産石油を割引価格で購入したりしたことで、欧米や日本と「戦略的な分断」を招いていると懸念を示し、露製兵器に依存するインドは今後、「デリケートな対応が必要だ」と指摘した。
先月末、インドのサンジェイ・クマール・バルマ駐日大使に会う機会があった。インドがロシア非難をせず、対露経済制裁にも加わらない理由を尋ねると、バルマ大使は「日本が自国の国益で政策を決めるように、インドも自国の国益に則って判断している」と語った。だが、何がインドの国益なのかは明確にはしなかった。
インドのモディ首相は来週、岸田文雄首相との会談やクアッド首脳会合に出席するため来日する。ロシアを非難しないのは、兵器や安価な石油が欲しいからなのか。インドは日本と価値観を共有する仲間ではないのか。ぜひ聞いてみたい。JFは、インドの行方とともに分断する世界の動向を日本の視点で世界に伝えていきたいと思う。
(JAPAN Forward編集部)
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※「日本を発信」シリーズは、産経新聞のオピニオン面に掲載された記事を転載しています