[Mythbusters] The ‘Happiness Report’ that Makes Me Very Unhappy
(【神話を斬る】「世界幸福度」調査をみると悲しくなる)
米世論調査会社ギャラップは今年3月、世界幸福度調査(WHR)の結果を発表した。それによると、日本は調査対象156カ国中58位で、1―3位はフィンランド、デンマーク、ノルウェーと北欧諸国が占める結果となった。
日本は、本当に国民の幸福度がそれほど低い国なのか―。そんな疑問から英語ニュース・オピニオンサイト「JAPAN Forward」(JF)が検証した記事の見出しが、上の英文(日本語訳)だ。
記事は5月に上下2回に分けて掲載された。2回目の記事の見出しは『‘Happiness Report’ Uses Western Thinking to Measure Japan』(「世界幸福度」日本低評価のワケは西洋の基準で測っているから)だった。検証には、JF解説委員のアール・キンモンス大正大学名誉教授が当たった。
教授は、調査の最大の問題点がギャラップの調査手法にあると指摘した。調査はランダムに選んだ1000人を対象に主観的な幸福度を尋ねるもので、異なる文化や宗教、国民の考え方によって回答は大きく左右され、均質で公正な結果は得られないという。さらには、調査対象者数が国の規模にかかわらず一定であるところにも問題があると強調する。
たとえば、WHR4位のアイスランドは、人口33万7000人(2018年)。国民の7割が福音ルーテル派を信仰する「均一的な」国には「1000人の調査で十分かもしれない」。
一方、人口13億5400万超(同)を擁するインドは事情が違う。国民の8割がヒンズー教を信仰しているとはいえ、イスラム教やキリスト教、シーク教など「複数の宗教グループ」や「多数の民族」を抱える国では対象者数の点でどれほど精緻な調査ができるか不明だと疑問を呈した。
日本より上位の24位のフランスでは、数カ月にわたり黄色いベストを着た市民デモや暴力的抗議が続き、「大多数のフランス人が何らかの強い不満を抱いている」ことが明確になった。また、上位の国々では軒並み出生率が低下傾向にあるが、順位が低い日本は「2005年以降、徐々に出生率が上がっている」と皮肉を込めて指摘した。
記事は、「調査での質問は根本的に西洋諸国の考え方に基づいており、調査は西洋の先入観にとらわれたものとなっている」とする慶応大の前野隆司教授のコメントを紹介。「17年までリポートの編集者3人はカナダ人、英国人、米国人で全て白人だった」ことを挙げた。編集者の一人は、日本の順位が振るわなかった結果について、「日本人が質問にどう答えるかの問題だ」と述べたという。
検証に当たったキンモンス教授は、「もっととがめられるべきは、自分たちの利益のため、こうした指標を引用する記者や学者だ」と警鐘を鳴らした。
JFは、欧米や日本の一部のメディアが発信するいかがわしい情報や疑わしい調査を暴いていく。
(JAPAN Forward編集部)
※「日本を発信」シリーズは、産経新聞のオピニオン面に掲載された記事を転載しています。