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中国政府は自国の巨大なインフラ建設構想「一帯一路」の10周年を10月中旬、北京での大規模な国際会議で祝い、その成功を強調した。だが米国側ではこの構想を当初から中国の覇権の追求とみて警戒し、その中国自身の狙いもいまや失敗に終わったとの見解がコンセンサスのようである。
米国側の反応では、「荒廃への中国の道・北京の一帯一路の真の被害」と題する論文が代表的だった。大手外交雑誌の「フォーリン・アフェアーズ」10月号に載った長大な論文はスタンフォード大の国際問題研究所の2人の研究員フランシス・フクヤマ、マイケル・ベノン両氏が筆者だった。フクヤマ氏は東西冷戦でのソ連崩壊について「歴史の終わり」という論文で国際的注視を集めた政治学者、ベノン氏は国際開発を専門とする経済学者である。
同論文は中国が総額1兆ドルを100カ国以上に投資し、世界最大規模のインフラ建設を進めたが、中国のパワーと影響力を広め、中国、対象国の両方に経済成長効果をもたらすという本来の目的を果たさず、世界規模の債務の拡大と中国への反発や不信を増すだけに終わったと総括していた。
筆者:古森義久(産経新聞ワシントン駐在客員特派員)
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2023年10月27日付産経新聞【緯度経度】より