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日本学術会議の存在意義について議論が盛り上がっている。学術会議を設立した日本学術会議法は1948年に制定された。当時、連合国軍総司令部(GHQ)は日本を世界平和の敵と見て、2度と世界に立ち向かえない弱い国にすることを目標としていた。

 

GHQが草案を作成し、前年に施行された憲法の前文には「日本国民は、(略)政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、(略)この憲法を確定する」とある。つまり、日本政府が再び侵略戦争を起こして国民に被害を与えないようにするために憲法を制定すると宣言しているのだ。

 

学術会議も同じ精神で設立された。性悪説に立って日本政府を厳しく監視しながら、日本の国益を侵す外国を性善説で信頼する。だから、自衛隊が違憲だという奇怪な学説がいまだに憲法学界を支配し、学術会議は防衛に資する研究をするなと公然と学者らを縛り付けてきた。

 

 

政治的に偏向する学界

 

日本の社会科学、人文科学の学界は政治的に偏向している。政府を犯罪予備軍のように見て、その行いを監視するという空気が学界を占めている。もちろん、そのような空気と無縁の学者もいるが、学界全体を見るとその空気が支配的だ。

 

私が慰安婦問題と北朝鮮による日本人拉致問題の研究を始めた1980年代後半、私の研究は学界でほぼ完全に孤立していた。慰安婦に関する研究は、朝日新聞が2014年に自社の誤報を一部認めたことで、私の学説がやっと学界の一部で認められるかに思えた。しかし、実は数年前、私は当時所属していた大学の理事会を構成している団体からの抗議により、その大学を辞めざるを得ないところに追い込まれた経験を持つ。

 

拉致問題では2002年の小泉純一郎首相の訪朝で北朝鮮が5人の被害者を帰国させ、日本中の関心が高まる中、私は拉致問題の全体像を研究しようと、2005年に日本学術振興会が管轄する科学研究費を申請したが、認められなかった。

 

学術振興会は文科省の機関であり、法令で「文部科学大臣は、振興会の業務運営に関し、日本学術会議と緊密な連絡を図るものとする」として、学術会議との連携が義務づけられている。テーマに関連する学界の有力者が審査委員として科研費助成の可否を決めるシステムを取っているが、2004年までは学術会議が審査委員を推薦していた。当然、学界全体の雰囲気が審査に反映されざるを得ない。

 

 

政府の人事権発動は正当

 

日本を普通の自由民主主義国家として再建するためには学界の正常化が必要だ。菅義偉政権が法令上の権限を使って学術会議会員の人事権を発動したことは、そのための一歩になる。自民党は学術会議のあり方の見直しを始めた。ぜひ、法を改正して学術会議を解散させるべきだ。それが学界正常化につながる。

 

筆者:西岡力(国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授)

 

 

国家基本問題研究所(JINF)「今週の直言」第729回(2020年10月19日)を転載しています

 

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