Fumio Kishida City of London May 5

Prime Minister Fumio Kishida in the City of London, May 5, 2022 (Pool photograph)

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岸田文雄首相(自民党総裁)が5月3日の憲法記念日を前に産経新聞のインタビューに応じ、憲法改正に向けては、国会議論と国民世論を同時並行で盛り上げていく重要性を訴え、夏の参院選で党公約の重点項目とする方針を示した。ロシアによるウクライナ侵攻を受け、大型連休中のアジアと欧州の5カ国歴訪など積極的に進める外交の意義についても語った。

 

 

緊急事態条項 有事の備え重要

 

―改憲を党是とする自民党総裁として任期(令和6年9月末)中に改憲を実現すると表明しているが、改めて改憲への決意を。今国会では衆参両院で憲法審査会が開かれ、以前よりも活発な議論が行われている

 

首相の立場のため、具体的なスケジュールを述べることは控えたいですが、改憲は党是です。憲法は施行から75年が経過し、時代にそぐわず、不足している内容もあります。ぜひ、改憲をしたいと思います。

 

今国会では、9年ぶりに衆院での予算審議中に憲法審が開かれ、議論が続いていることを歓迎します。国会での議論は深めてもらいたいですが、改憲の発議は国会でやるものの、最終的に憲法のあり方を決めるのは国民です。国会での議論が国民の理解や盛り上がりにつながっていくことが大事です。国民の中で改憲に向けての議論が高まることを期待しています。

 

―首相は就任後、党の憲法改正推進本部を実現本部に改組し、世論喚起を強化している。手応えは

 

実現本部が中心となり、全国各地できめ細かく集会を開いています。2月には岐阜市で初の集会が開かれ、古屋圭司本部長から報告を受けています。こうした取り組みによって党が掲げる改憲4項目(9条への自衛隊明記・緊急事態条項・参院選「合区」解消・教育の充実)への国民の理解が着実に広がることを期待します。少しずつではありますが、手応えを感じています。

 

―党参院選公約に改憲をどのように盛り込むのか

 

従来、衆院選でも参院選でも重点項目の一つとして改憲は掲げています。次の選挙でも改憲を訴えていくことになると思っています。選挙での訴えを通じ、党の積極的な姿勢をアピールしたいです。

 

―改憲4項目のうち、総裁として、優先的な議論が必要な項目は何か。4項目には、新型コロナウイルス禍やロシアによるウクライナ侵攻で注目された緊急事態条項も盛り込まれているが、創設の必要性は

 

4項目はいずれも極めて現代的な課題であり、早期実現が求められています。どれを優先させるということではなく、4項目を掲げたうえで、国会の議論を深めながら、与野党で合意をできたものから、一つ一つ結果につなげていくことが重要です。

 

また、緊急事態条項への関心が高まっていることも感じています。緊急時に国会の権能を維持し、国家や国民の役割を明記しておくことは、有事の備えとして重要です。4項目の中でも重要な項目の一つです。

 

 

自衛隊明記 丁寧に

 

―自衛隊明記への考え方は

 

自衛隊には大規模災害、さらには、新型コロナへの対応などさまざまな活動を行ってもらっており、国民からも評価されています。ウクライナ侵略という事態もあり、改めて国民の命や暮らしを守るためにはどうあるべきなのかという国民の意識が高まっており、自衛隊に対する期待や評価も高まっています。

 

それにもかかわらず、自衛隊は違憲であるという論争が今でも存在するということに、国民は違和感や問題意識を持っているのではないかと感じています。自衛隊の違憲論争に終止符を打つため、(自衛隊明記は)大変重要な課題であると丁寧に説明を続けていきたいと思います。

 

―4項目では、参院選「合区」の解消も掲げる

 

参院の選挙区は人口比例のみを尺度とした定数配分によって4県(鳥取・島根、徳島・高知)に合区が導入されています。これに対し、改憲4項目では、政治的あるいは社会的に重要な意義を持つ都道府県の住民の意思を集約的に反映することが重要であるという考え方に基づき、合区を解消する必要があると掲げました。こうした問題意識は重要です。合区や一票の重みへの考え方を整理していくことは改憲議論の重要なポイントです。

 

 

アジアのリーダー 役割果たす

 

―改憲に向け、連立与党を組む公明党の賛成は欠かせない。公明は自衛隊明記などに関し慎重な意見もあるが、どのように理解を得ていくのか。また、改憲に積極的な日本維新の会や国民民主党とはどのように連携を図っていくのか

 

改憲の発議にあたっては、与野党の合意を得なければなりません。公明をはじめ、他党の動きも重要です。憲法のあり方を決めるのは国民だと申し上げましたが、国民の雰囲気は政党の姿勢にも影響します。

 

国会の議論と国民世論は同時並行で盛り上げていかなくてはなりません。国会の議論が国民の意識の喚起につながり、国民の反応が政党を動かしていくのです。公明をはじめ、他の政党にも改憲に前向きな対応を期待します。もともと前向きな政党とは具体的に発議のあり方をしっかり詰め、国会議論を進めていくことが重要です。

 

日米同盟を強固に

 

―大型連休では、インドネシア、ベトナム、タイ、イタリア、英国の5カ国を歴訪する。狙いは。また、日本の外交・安全保障の基軸である米国のバイデン大統領とはどのように関係強化を図るのか

 

ロシアによるウクライナ侵略を受け、国際社会と連携して、力による一方的な現状変更は許さないという毅然(きぜん)とした対応が求められています。わが国もロシアへの制裁やウクライナへの人道支援、国連安全保障理事会の改革などに取り組んでいますが、ウクライナ情勢は欧州だけの問題ではありません。

 

アジアを含む国際秩序全体を揺るがす暴挙であるという考え方をアジアでも広げ、国際社会が一致結束した意思を表明する雰囲気を広げていくことが大事です。日本はアジアで唯一、G7(先進7カ国)に参加しており、アジアで国際世論をリードするという大きな役割を果たしていかなければなりません。

 

今回の訪問先のうち、特にインドネシアは今年のG20(20カ国・地域)の議長国であり、来年はASEAN(東南アジア諸国連合)の議長国を務めます。タイはAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の今年の議長国、ベトナムは中国に対する考え方などで一致することも多く、日本にとって大切な国です。

 

また、イタリアと英国はG7のメンバーですが、こうした国々とも意思疎通を図り、首脳との個人的な信頼関係を構築していくことは、日本が来年、G7議長国を務めるうえでも大事なことです。

 

日米関係については、私が訪米し、対面での首脳会談を行うには至っていませんが、昨年11月に英北部グラスゴーで開かれたCOP26(国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議)や、今年3月にベルギー・ブリュッセルで開かれたG7のサミット(首脳会議)でもバイデン氏との意見交換を行っています。

 

それ以外にも電話でのやり取りなどさまざまな意思疎通を図ってきました。こうした取り組みを重ねながら、日米首脳間の信頼関係と日米同盟のより強固な絆を確認し続けていきたいと思います。

 

―来年のG7サミットは首相の地元・広島市での開催が有力とされている

 

調整中です。広島市以外にも、(名古屋市や福岡市など)候補地として立候補している都市があり、サミット開催に向けた物理的な条件をはじめ、さまざまな観点からそれぞれの候補地をしっかり判断させていただいています。

 

 

聞き手:大谷次郎(産経新聞政治部長)

 

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