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女性は話が長いと軽口をたたいた森喜朗前東京五輪・パラリンピック組織委員会会長、選択的夫婦別姓に反対していた丸川珠代五輪相、白血病と闘い五輪出場権を勝ち取った競泳の池江璃花子選手…。そして次の生贄(いけにえ)は、五輪開催中止論を笑い飛ばした高橋洋一内閣官房参与のようである。
ともに五輪中止を訴える野党、立憲民主党と共産党は5月14日、衆院内閣委員会を途中退席した。国内の新型コロナウイルス感染状況を「さざ波」と表現した高橋氏の出席がなければ、審議できないとの主張である。高橋氏の参与辞任も求めていくという。
もともとコロナ流行状況は、現在が「第4波」と呼ばれるように「波」で言い表されてきた。医師で元厚生労働省医系技官の木村盛世氏は10日のツイッターで、「“さざ波”は私が使い始めた」と明かしている。野党や左派マスコミは、なぜここまで目くじらを立てなければならないのか。
世界のコロナ累計感染者(陽性反応者)数を13日時点で見ると米国約3281万人、インド2370万人、フランス588万人、英国445万人と、日本の66万人とは桁が違う。各国と比較して「さざ波」と表現することまで許されないとすれば、日本社会は何と不寛容なことだろう。
池江選手に「五輪を辞退しろ」などと心ない要請をしたツイッター投稿を鳥海不二夫・東大大学院工学系研究科教授が分析したところ、興味深いことが判明した。投稿者の80%近くが、過去投稿から「リベラル系」と分類されるのだという。
左派・リベラル勢力が五輪を中止に追い込みたい背景は判然としない。だがいずれにしても、粉飾した正義で特定個人を血祭りに上げ、五輪を政治目的に利用しようとする姿は醜悪である。
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2021年5月15日付産経新聞【産経抄】を転載しています