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日本最南端の沖ノ鳥島(東京都小笠原村)周辺の排他的経済水域(EEZ)で7月18日、中国調査船がワイヤのようなものを引き上げているのを海上保安庁が確認した。同海域の航行は10日連続、調査は3日連続となった。政府は国連海洋法条約に反するとして中国側に抗議しているが、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺で続く中国公船の挑発行為に続く懸案となっている。

 

 

「即時に中止すべきだ」

 

菅義偉官房長官は同17日の記者会見で「科学的調査を実施しているのであれば即時に中止すべきだ。緊張感を持って関係省庁で連携し、毅然(きぜん)とした対応で臨んでいきたい」と述べ、外交ルートで中国側に抗議していることを明らかにした。

 

日本側に無断で沖ノ鳥島沖での調査を続けたのは中国の海洋調査船「大洋号」。海保の巡視船が9日に確認して以降、15日を除き、18日午後5時過ぎにEEZ外に出るまで調査を行った。無線や電光掲示板を使った海保の中止要請にもかかわらず、14日までの6日間連続の調査は平成23年以降の最長期間を更新した。

 

尖閣諸島周辺でも中国公船の連続航行日数が長期化している。政府・与党内には、中国側が沖ノ鳥島と尖閣諸島での動きを連動させて海洋進出を強めているとの見方がある。

 

国連海洋法条約は他国のEEZにおける無断の海洋調査を認めていない。中国政府は沖ノ鳥島は「島ではなく岩礁だ」と主張している。また、中国調査船が同島周辺で科学的調査をするのに「日本の許可は必要ない」としている。

 

 

狙いは「資源」と「戦略」

 

中国当局が沖ノ鳥島沖の日本のEEZで海洋調査を活発化させている背景には「沖ノ鳥島は島ではなく岩で、EEZや大陸棚は認められない」(華春瑩外務省報道官)との主張を既成事実化する狙いがある。沖ノ鳥島を基点とする日本のEEZを認めた場合、中国側は周辺の海底資源をめぐる自らの権益と海軍戦略に大きな打撃を被ると認識しているためだ。

 

「海洋強国」を標榜(ひょうぼう)する中国は、第1列島線(九州-沖縄-台湾-フィリピン)内の東・南シナ海から米軍を追い出し、さらに小笠原諸島やグアムを結ぶ「第2列島線」内の西太平洋にも近づけさせない「接近阻止・領域拒否」戦略をとる。

 

中国にとって、両列島線の中間にある沖ノ鳥島は、軍事的要衝としても無視できない。同島周辺の海底地形や潮流などの海洋調査は、潜水艦を展開させるために必要となる。

 

中国は南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島などを強引に軍事拠点化しており、これと同じ行動を日本がとることを懸念している。日本が沖ノ鳥島を「第1・第2列島線間の跳躍台」(中国メディア)とすれば、中国海軍はこの海域で自由な行動がとれなくなる。

 

 

空母化で対抗

 

「わが国の領土、領海、領空は断固として守り抜く」

 

菅義偉官房長官は17日の記者会見で沖ノ鳥島での中国船の調査活動について問われ、こう強調した。

 

政府が中国の行動を深刻に受け止めているのは、沖ノ鳥島周辺のEEZに豊富な鉱物資源が眠っているからだけではない。中国が近年、沖ノ鳥島の南方にある太平洋島嶼(とうしょ)国への関与を強めていることも懸念材料となっている。調査船の活動は、中国による南太平洋への海洋進出戦略の一環をなしているとみられている。

 

防衛省が海上自衛隊の「いずも」型護衛艦を戦闘機搭載可能な事実上の空母に改修する計画を進めているのも、太平洋における中国の活動を念頭に置いている。自衛隊幹部は「太平洋に自衛隊が使える空港がほとんどない。いずもを空母化することで、中国に対抗する狙いがある」と明かす。

 

 

抗議だけでは

 

ただ、日本政府の再三にわたる抗議は、結果として中国側に無視され続けてきた。自民党内では政府による抗議のみでは不十分だとして、具体的な対策を求める声が高まっている。

 

「中国側は海洋進出の既成事実を積み重ねている。党として対策を練らないといけない」

 

17日の自民党総務会では原田義昭前環境相がこう問題提起した。山田宏前防衛政務官は産経新聞の取材に「抗議をしているだけではだめだ。(排除のための)実力行使がとれるように国内法を整備する必要がある」と訴えた。

 

筆者:原川貴郎、奥原慎平、西見由章(産経新聞)

 

 

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