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新型コロナウイルス禍の中でも厳しい寒さが続き、温泉が恋しい季節だ。関西では有馬温泉(神戸市)や白浜温泉(和歌山県白浜町)が有名だが、大阪でも「天然温泉」の看板を掲げる施設が目立つ。実は、大阪市などの都市部でも温泉は湧き出ており、大阪府内の源泉数は近畿2府4県の中で和歌山、兵庫両県に次ぎ3番目に多い。意外な事実の背景を探った。
ホテルチェーンも
1月20日夕、大阪市港区のJR弁天町駅前。立ち並ぶ高層ビルの一角にある「空庭温泉 OSAKA BAY TOWERO」を訪れた。
「関西最大級の温泉型テーマパーク」を掲げ、平成31年2月にオープンした同施設は、地下約1000メートルから天然温泉をくみ上げ、露天や炭酸、源泉など9種類の風呂を備える。
主なターゲットは仕事帰りのビジネスマンだが、緊急事態宣言下で営業時間を通常より3時間早い午後8時までに短縮していることもあってか、利用客はまばら。「コロナ禍の前は外国人客も多かったが、めっきり減った」との声も聞かれた。
温泉を売りにした宿泊施設も多い。スーパーホテル(大阪市)は府内10店舗中6店舗で温泉を提供。同市西区の店舗の地下約1000メートルから温泉をくみ上げ、各店舗に配送する「運び湯」を行っている。府内7店舗に温泉があるホテル「ドーミーイン」も源泉を確保するとともに、近隣地域からの運び湯をしている。
地質に秘密
温泉法は、硫黄やラドンといった特定物質を一定量含有するか、採取時の温度が25度以上の温水や水蒸気などを「温泉」と定義している。
府によると、大阪の地下で採取される温泉は多量の特定物質を含有しているわけではなく、源泉25度以上の「単純温泉」が多くを占める。これには、「地温勾配」と呼ばれる温度の上昇率が深く関係する。一般的に地表からの深さ100メートルごとに2~3度ほど上がるとされるが、府内では地温勾配が一般より高い3度台後半の場所が多く、「千メートル掘れば温度は40度ほどになる」(府担当者)という。
新たな掘削に規制
大阪の地下構造に詳しい一般財団法人「地域地盤環境研究所」(大阪市)によると、府内の平野部の地下約1000~1500メートルの砂礫(されき)層に浸透した雨水などが地下の熱に温められ、温水になるのではないかといわれる。近畿地方の下にはフィリピン海プレートが沈み込んでいて、温泉の形成に関与していると考えられている。
大阪府は20年度から温泉を保護するとともに、掘削時のガス爆発事故などを避けるため、すでに判明している源泉の半径800メートル以内で新たに掘削しないといった事業者向けの基準を定め、規制している。大阪市などの都市部を中心に、かつて盛んだった温泉開発は落ち着きつつあるという。
筆者:佐藤祐介(産経新聞)