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自民党総裁選(17日告示、29日投開票)の情勢が流動的となる中、出馬の意欲を示している高市早苗前総務相が「台風の目」となるか注目されている。高市氏には特に保守系議員からの期待が大きく、次期衆院選の顔として「初の女性首相」が有利との見方も追い風となっている。立候補への課題だった党所属国会議員20人の推薦人も確保できる見通しとなり、準備を加速させている。
「総裁選が無風だと自民党の活力が失われる。国民にもたくさんのアイデアが伝わらない。そういう危機感があった」
高市氏は2日のインターネット番組で、出馬への思いをこう語った。安倍晋三前首相に出馬を促したが断られたと明らかにし、「『それなら私が出たるわ』とタンカを切ってしまった」と振り返った。
この日は、番組出演を複数こなすなど、支持拡大に向けて精力的に活動した。記者団には「派閥を超えて多くの議員から応援をいただいている」と述べ、20人以上から推薦人として名前を出して支援するとの申し出を受けていると説明した。
高市氏は党内の保守系議員でつくる「保守団結の会」や「『絆』を紡ぐ会」などに参加する。紛糾した選択的夫婦別姓の党内議論をめぐっては、旧姓の通称使用拡大を訴える慎重派の筆頭格として存在感を発揮した。
総裁選に向けては物価安定目標のインフレ率2%や憲法改正、中国への技術流出を防ぐための法整備などを掲げ、保守色の強かった「安倍路線」の継承を打ち出す。菅義偉政権に代わったことで離れつつあるとされる「岩盤保守層」を取り戻すことができるとの期待感がある。
今回の総裁選は、主要派閥が首相支持に雪崩を打った昨年9月の前回と異なり、自主投票となる動きが強まっていることも、高市氏には好材料だ。ある閣僚経験者は「首相も岸田文雄前政調会長もパッとしない。高市氏を支持する人は一定数出てくる」と強調。その上で「女性という強みがあり、国家観もしっかりしている。子育てや少子化といった国民に身近な政策をもっと打ち出したらいい」と助言する。
ただ、長い自民党の歴史で女性が総裁選に立候補できたのは、平成20年の小池百合子現東京都知事しかいない。無派閥の高市氏には強固な党内基盤がなく「政策通だが、一匹おおかみ」との評もあり、保守系以外にも支持を広げられるかが課題となる。
筆者:広池慶一(産経新聞)