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恐怖とエロス…日本の多様性を物語る作品群 「奇想の国の麗人たち」東京・弥生美術館

Kazuhiko Shibusawa

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多様な価値観が尊重される現代。日本では古典文学などに見られるように、怪奇や性的な表現に寛容で、そんな物語を題材にした絵画もしばしば描かれた。弥生美術館(東京都文京区)で開催されている「奇想の国の麗人たち~絵で見る日本のあやしい話~」展では、近代から現代までゾクゾクする作品が一堂に会している。

 

 

暗闇でロウソクの炎で浮かび上がる美女。しなやかな裸体はなんとも妖しい。新聞小説などの挿絵でも活躍した洋画家、御正伸(みしょう・しん)(1914~81年)の「葵」だ。題材となっているのは『源氏物語』の葵の巻。光源氏の愛人、六条御息所(ろくじょうみやすどころ)は生霊となって源氏の正妻、葵の上にとりついて殺してしまうというおどろおどろしい場面が描写された。胸をあらわにした六条御息所の生霊と、苦しそうにもだえる葵の上。青い色彩に包まれたクールな画面は、恐怖とエロスが同居する。

 

男女の愛欲を奔放に描いた紫式部。平安末期以降、人心を惑わせたとして地獄に落ちたという話が広まったという。妖艶な女性像を得意にした日本画家、橘小夢(さゆめ)(1892~1970年)は、日本の伝説を好んだ。紫式部を主題にした「紫式部妄語地獄」は、もだえ苦しむ女性の表情はなんとも妖しい。今回初公開となった。小夢は一部に熱狂的に指示されたが、広く知られることはなかった。「幻の画家」とされていたが、同館が調査・研究し平成27年に展覧会を開催し注目を集めた。

 

 

日本の古典文学や昔話には、霊や鬼、ヘビやキツネ、クモや魚などにまつわる不思議な話が多々あり、浮世絵などでもしばしば描かれてきた。歌舞伎などで演じられ広く知られているのが、平安時代の「安珍・清姫伝説」。思いを寄せた僧の安珍に裏切られた清姫が怒りのあまり追ううちにヘビになり、鐘の中に隠れていた安珍を焼き殺してしまうという話だ。

 

「安珍・清姫伝説」は、日本画家、小林古径(こけい)(1883~1957年)の代表作「清姫」があるが、本展で紹介されているのは現代の画家、加藤美紀(1973年生まれ)の「日高川」。清姫が川を泳ぎながらヘビに変身する姿を描いた作品で、全体が赤く染まり、女性の肌の白さが際立ち、怖さを増長させる。加藤は「安珍に裏切られた清姫の悲しみや絶望を表現したかった」と語っているように、狂おしいほどの情念がほとばしる。

 

現代ではLGBT(性的少数者)が認知されているが、ボーイズラブはいまに始まったことではない。僧侶と稚児(ちご)の恋愛物語は「稚児物語」として、中世の御伽草子などに残っている。成立年は定かではないが「秋夜長物語(あきのよながものがたり)」がその最初の作品とされている。

 

 

大正から昭和初期、抒情的な絵で人気画家となった高畠華宵(たかばたけ・かしょう)(1888~1966年)は「秋夜長物語」を題材にした絵を残している。美少年を繊細なタッチで甘美でロマンチックに描き出している。

 

「稚児は観音様の化身とされ、稚児と交わることは徳の高い行為だった」と同館の中村圭子学芸員。

 

稚児の美しさの奥には深淵な世界が広がっているようだ。文学を知り、幻想的な絵画を鑑賞することで、奇想の国の奥深さが見えてくる。

 

「大人が知的に遊べるのではないでしょうか」と中村学芸員は話している。

 

来年1月31日まで(年末年始、月曜休)、弥生美術館で開催中。一般1000円。休館日などの問い合わせは同館03-3812-0012。

 

筆者:渋沢和彦(産経新聞)

 

 

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Kazuhiko Shibusawa is a staff writer of the Sankei Shimbun Cultural News department.

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