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【主張】最年少の3冠 「知識」に最短距離はない

Editorial Board, The Sankei Shimbun

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将棋の藤井聡太棋聖(王位)が9月13日、第6期叡王戦五番勝負で豊島将之叡王(竜王)を破り、3つ目のタイトルとなる叡王位を獲得した。19歳1カ月での3冠は、羽生善治九段の22歳3カ月を更新する最年少記録だ。

 

タイトルを1期獲得するだけでも至難とされる世界で、10代での快挙には驚きしか覚えない。ただ一人、7冠を経験した羽生九段が「昨今の藤井さんの内容の充実ぶりを考えると不思議とは思わない」と語ったのは、藤井棋聖の力が異次元の領域に達しているということなのだろう。

 

藤井聡太氏(左)と豊島将之氏

 

藤井棋聖は10月から、名人戦と並ぶ棋界最高峰の竜王戦で豊島竜王に挑む。両者の知力と死力を尽くした名局を期待したい。

 

優劣の評価が難しい序・中盤の研究に、藤井棋聖が人工知能(AI)を搭載したソフトを用いていることは有名だ。昨今はインターネットやテレビの対局中継でAIの形勢判断が数値で示され、ルールに明るくない人でも観戦を楽しめるようになった。

 

歓迎すべき現象だが、AIの提示した評価が絶対ではないことにも留意したい。

 

多くの知識が手軽に得られるようになった環境を、羽生九段は高速道路にたとえたことがある。文明の利器を使えば、答えを手にする労力は省ける。目的地に到達する時間も短縮されるが、周囲の景色は覚えていない。「なぜそうなるのか」という深い思考がないまま得た知識が本物といえるのか、という警鐘だ。思考や試行錯誤を繰り返し、過程を含めて理解してこそ身に付くものがある、と羽生九段は指摘する。

 

 

藤井棋聖の快進撃を支えるのは、ときに1時間、2時間を超える長考も辞さない探求心だ。その始発点にあるのは、定跡や常識とされるものへの疑いであり、3冠達成はAIが示すものを無条件に受け入れた結果ではない。

 

学校教育では、児童・生徒に1人1台の端末を配布するなど、利便性と速度を重視した環境の整備が進みつつある。答えを急がせたり、結論を得るための時間や労力を惜しませるようなことがあってはならない。

 

むしろ、最善の一手を求めて苦悩する藤井棋聖の姿を手本とするのが、学校教育の望ましい姿ではないか。知識をものにするのに最短距離はないということだ。

 

 

2021年9月19日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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