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【主張】露の日本漁船連行 全乗組員を即時解放せよ

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ロシア船「AMUR」

 

北海道稚内市沖のオホーツク海で操業中だった稚内機船漁業協同組合所属の底引き網漁船、「第172栄宝丸」(160トン、14人乗り)が5月28日、ロシア国境警備局の臨検を受けた後、サハリン(樺太)南部コルサコフ港に連行された。

 

ロシアは栄宝丸の乗組員全員を即刻、解放すべきである。

 

栄宝丸は拿捕(だほ)の前、第1管区海上保安本部(小樽)にロシア警備艇から催涙弾や信号弾を撃たれたと通報した。

 

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ロシア側は「栄宝丸はロシアの排他的経済水域(EEZ)で違法操業していた」「停船を求めたが、逃げようとしたので警告射撃した」と発表した。

 

だが、漁協は航路を示すデータを基に「栄宝丸は日本のEEZ外には出ていない」「連行は不当だ」と反論している。漁業資源などへ主権的権利が及ぶ日本のEEZ内では、ロシア側に漁船を威嚇し、連行する権限は一切ない。

 

この2日前にはオホーツク海の紋別市沖で毛ガニ漁船「第8北幸丸」とロシア船「AMUR」が衝突し、北幸丸が転覆して乗組員3人が死亡する事故が起きた。運輸安全委員会は双方の船長らから事情を聴き、原因について調べている。関係者の間では、栄宝丸の唐突な拿捕はこの衝突事故の処理をロシア側の有利に導く取引材料に使う思惑ではないか、といった観測も出ている。

 

 

平成18年、プーチン政権7年目の夏、北方領土の歯舞群島海域でカニかご漁船「第31吉進丸」がロシア国境警備艇に銃撃され、35歳の漁船員が死亡した。坂下登船長は国後島へ強制連行され、「国境侵犯」と「密漁」の罪で起訴された。「200万円超の罰金と船の没収」という有罪判決を受けて根室に戻ったのは1カ月半後だ。

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帰還後、坂下船長は「銃撃現場は(ロシア側も日本の領海と認める)北海道側の『規則ライン』上だった。法廷ではウソの供述を強要された」と明かした。

 

栄宝丸の拿捕で政府は「乗組員と船体の早期帰還」を働きかけているが、露メディアは「船からはカニが大量に見つかった」などと違法操業を強調している。このままでは吉進丸の悲劇を繰り返す。日本の外交は北方領土問題でプーチン政権に煮え湯を飲まされ通しだ。ここは船員救援のため、断固たる行動を取るべきだ。

 

 

2021年6月1日付産経新聞【主張】を転載しています

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