fbpx
Connect with us
Advertisement

クジラは知能が高い動物 捕鯨再開は「野蛮」 批判報道を検証

Published

on

 

日本政府がクジラの資源管理を担う国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退を発表したことを受け、海外で日本バッシングが起きている。反捕鯨国の欧米、オセアニアの主要メディアは「野蛮」「愚かな行為」と全面的に非難。IWC総会で反捕鯨国の政府代表団から出され、クジラの捕獲を一切認めないとする同様の主張が展開されている。先入観に基づく感情的な表現やクジラを「聖なる動物」ととらえる価値観も目立ち、日本の伝統文化への理解がほとんど見られないのも特徴だ。

 

日本政府がIWC脱退を発表したのは昨年の12月25日。一通りの報道の後、年末年始にかけて出された欧米、オセアニアメディアの主張やコラムには強い表現での日本非難が相次いだ。

 

米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は「日本はクジラの虐殺をやめよ」とする社説を掲載し、「雄大な生き物を殺す正当性は商業的にも、文化的にも、科学的にも一切ない」とし、日本の姿勢を根底から批判している。IWCが1986年に発効した商業捕鯨モラトリアム(一時停止)の後、日本が南極海などで続けてきた調査捕鯨について、社説は「科学的調査を行っていたのは神話だった」などと指摘。「(日本は)自身を海賊捕鯨国と宣言した」とする反捕鯨団体シー・シェパードの声明を取り入れ、説を補強している。

 

反捕鯨国では調査捕鯨の実施について、日本がIWC枠内での正当なルールであり、科学的正当性を持つと主張しても、「偽の商業捕鯨」であるという世論が固定化してしまっている。

Advertisement

 

オーストラリア紙のシドニー・モーニング・ヘラルドも社説で、調査捕鯨を「無意味な作り話」ととらえ、「日本は何十年もの間、IWCを台無しにしてきた」と批判。英紙フィナンシャル・タイムズも、日本は「長い間、IWCの抜け穴を悪用していた」と指摘した。

 

 

一方で、NYTは「クジラを殺すことが容認できる追求とみなされていた時代から世界中のほとんど(ほとんどの日本人も)が進歩した」と指摘。欧米のリベラル派の一部には、クジラのような知能の高い動物ほど、食用にしたり、見せ物にしたり、実験用に飼育したりすることへの強い抵抗が見られるが、NYTも「(捕鯨という日本の)慣習が文化的重要性を持つからと言って、高い知能レベルを持つ動物を残虐に殺害することは擁護できない」とする論を展開した。

 

知能の高いとされる動物を人間活動のために利用したりすることへの拒否感は、環境保護運動の意識が高まった1970年代以降に欧米で浸透してきた概念だ。動物は、人間に搾取されない生きる権利を持つという「動物の権利」運動とともに信奉者が増えている。

Advertisement

 

欧米がやめた、クジラを「殺す」行為について、シドニー・モーニング・ヘラルドの社説も、アフリカで戦利品の獲得のためにゾウやサイを狩猟するのと同列に並べ、「野蛮な行為だ」と断罪している。

 

IWC脱退の決定を「経済的にも、生態学的にも全く正当性を持たない」と批判する英高級日曜紙オブザーバーの社説にもこうした考え方がにじみ出ている。同紙は「食料のために、地球上で最も知的な生き物を虐殺する準備計画は一貫性にかける」と指摘。こうした非難は、クジラの命に感謝しながら、肉や骨、ひげまでも余すことなく「いただいて」きた日本人の伝統的価値観とは相いれない。

 

 

さらに、今回の商業捕鯨再開への批判には1994年に、ノルウェーの人類学者、アルネ・カラン教授が提唱した「スーパー・ホエール」の影響を受けた言及も見え隠れする。

Advertisement

 

世界の海洋には80種の鯨類が生息し、全ての種が絶滅の危機にあるわけではない。イルカも同種なのだが、反捕鯨運動での言説の中では、あらゆるクジラやイルカの特徴を全部ひっくるめて、「スーパー・ホエール」という想像上の動物が作り上げられる。この架空のイメージが、環境保護運動のシンボルとして、利用されているというのだ。

 

英紙ガーディアンのコラムニスト、オーウェン・ジョーンズ氏は自らのコラムで「日本は昨冬、妊娠中の雌122頭を含むクジラを『調査目的』で狩りをした。『調査』と称される狩りの証拠は決定的に欠けている」と記した。

 

しかし、コラムではこのクジラが何の種であるかは説明されていない。実際、日本が調査捕鯨で捕獲したのは、生息数が回復し、絶滅の危機から脱したミンククジラである。コラムには日本側の捕鯨の実態が記されず、クジラを1種にまとめて表現する個所が散見され、ジョーンズ氏がスーパー・ホエールの影響を受けている節がうかがえる。

 

反捕鯨国のリーダーでもある英国のボリス・ジョンソン前外相は英紙テレグラフに発表した論文の中で、商業捕鯨再開への批判をこう展開している。

Advertisement

 

「人類が達せない海域で会話ができる動物がおり、彼らは異なる種と話をすることもできる。私たちに対しても話しかける。そのような生き物をやりで串刺しにすることは、残酷であり、冒涜(ぼうとく)のように思える。(中略)クジラの殺害は動物の福祉の観点から禁止されるべきだ」

 

スーパー・ホエールを利用した捕鯨への批判は、科学的データを無視したこうした感情論と結びつくことも多い。

 

この記事の英文記事を読む

 

Advertisement
Continue Reading
Click to comment

You must be logged in to post a comment Login

Leave a Reply

Our Partners