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マトリックス新作でアジア系女優が放つ存在感

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エンタメの王道、ハリウッド映画の超人気シリーズ4作目で18年ぶりの新作「マトリックス レザレクションズ」(監督・共同脚本=ラナ・ウォシャウスキー)が日本では12月17日、米国などでは同22日に公開されました。1999年公開の1作目「マトリックス」(監督・脚本=ウォシャウスキー姉妹)は<真の文化的現象となり、SF映画の物語展開と視覚効果の分水嶺(ぶんすいれい)と位置づけられるとともに、21世紀のハリウッドの娯楽大作のあり方を再定義した>(12月21日付米CNN電子版)と評される歴史的な傑作に。

 

続く「マトリックス リローデッド」と「マトリックス レボリューションズ」(共に2003年公開)を含む〝マトリックス3部作〟は文字通りSF映画の金字塔とあって、最新作への期待も高まるのですが、実は本作、アジア系の女優が主役のネオを演じる名優キアヌ・リーブスを食ってしまうほどの存在感を発揮しているのです。ハリウッドの大手映画会社が制作する超メジャーな作品でアジア系の女優がここまで大活躍した例は初めてです。

 

 

新作も文句なしの傑作

 

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「マトリックス レザレクションズ」主演のキアヌ・リーブス(Jose Carlos Fajardo/Bay Area News Group via AP)

 

われわれの住む現実社会が実はコンピューターが作り出した仮想世界だったという1作目の物語は、ネット時代の本格到来以前とあって、当時は難解過ぎるとの声も。さらに登場人物がジャンプしたまま静止し、ぐるっと360度回転して敵を蹴散らすといった名場面を生み出した特殊撮影技術「バレットタイム」のように、これまで見たことのない映像の数々は18年たった今も衝撃的です。

 

とはいえ、3部作の物語の根幹を成すネット技術もこの18年で飛躍的に進化しており、新作がどんな物語になるのか若干、不安でしたが、さすが天才ウォシャウスキー。想像のさらに上を全力疾走する挑戦的かつ見事な内容です。

 

「マトリックス レザレクションズ」のシーン (Warner Bros. Pictures via AP)

 

欧米でも<ウォシャウスキー監督は、現代社会の混乱に注意を向けさせると同時に、ハリウッドで一般的なリブート(過去のヒット映画などを新たな解釈で作り直すこと)文化を批判しつつ、驚くほど甘美でノスタルジアをかきたてる作品を作り出した>(米誌アトランティック電子版)、<ノスタルジックな勝利であり、慣れ親しんだ道にとらわれることなく、われわれがオリジナル版では何が、そして誰が好きだったかを思い出させてくれる>(米映画サイト「クロックド・マーキー」)などと、従来の概念を超えた傑作との声が上がっています。

 

 

3部作の「復習」必至

 

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3部作で機械と人間との戦争を終結させた救世主、ネオ(リーブス)。今回はトーマス・A・アンダーソンという名の世界的なビデオゲームのデザイナーで、あの3部作は何と、彼が生み出した人気のビデオゲームだったのです。

 

大勢のゲームファンが「あのゲームで人生変わったぜ。バレットタイム!」とあがめる存在なのですが、現実と妄想の区別がつかない精神の病にさいなまれています。ネオとともに戦ったトリニティ(キャリー=アン・モス)はティファニーという名の普通の主婦に…。

 

そんなアンダーソンの元に約20年間、彼を探していたバッグス(ジェシカ・ヘンウィック)という謎の女性と、ゲームのキャラクターであるモーフィアス(ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世)が登場。アンダーソンに恐るべき「真実」を告げます。アンダーソンは疑いつつも「真実」と向き合う決心をし、1作目と同様に、平凡な日常に戻る青の錠剤ではなく、赤い錠剤を飲むのです。

 

欧米、とりわけ米国では、この3部作が当時の社会や文化に与えた影響はすさまじく、大手の新聞や雑誌がコラムで、物事の二者択一を迫られる際の表現として<赤い錠剤を選ぶか、青い錠剤を選ぶか…>と書くことが一般化しています。

 

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そのため、この最新作は「誰もが3部作を繰り返し見ていて当然」という大前提のもとに制作されており、3部作を熟知している人なら、随所に挿入される名場面や懐かしの場所、登場人物などにワクワクするはず。とりわけ2作目と3作目でおなじみの、仮想世界に留まる不正プログラム「エグザイル」の親玉、メロビンジアン(ランベール・ウィルソン)が悪態を付く場面には笑いました。

 

 

アジア系の存在感

 

「マトリックス レザレクションズ」で存在感を放つ女優ジェシカ・ヘンウィック(AP)

 

本作の最大の見どころは、やはり、荒廃した現実世界を航行するムネモシュネ号の船長バッグスを演じた女優のヘンウィックに尽きます。1992年8月、英サリー州生まれの29歳で、父は英国人作家、母は中国系のシンガポール人。英BBCの子供向けドラマ「スピリット・ウォリアーズ」(2010年)の主役に選ばれた際、東アジア系の女優が英のテレビドラマで初めて主役を演じたと話題になりました。

 

また米HBOの人気ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のシーズン5~7(2015~17年)や「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」(2015年)などにも出演し、知名度を高めてきました。

 

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2019年11月29日付の本コラム「差別と戦いスターに 米ハリウッドで大活躍を始めた東アジアの男優たち」でご説明したように、ハリウッドでの東アジア系俳優の地位は黒人やヒスパニック(中南米)よりも低く、女性の場合はさらに低いとされていました。

 

しかし「ダイバーシティ」(多様性)への理解が深まる昨今、重要な役柄を演じる例は増えつつあり、「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」(2017年)で大活躍したベトナム系米国人女優ケリー・マリー・トランのような例も。しかし彼女の場合、脇役の範疇(はんちゅう)だったのに対し、「マトリックス」のヘンウィックのネオたちを助け、果敢に戦うブルーの髪のクールな格闘場面や凜(りん)とした佇(たたず)まいは主役や準主役に負けていません。

 

「マトリックス レザレクションズ」で主役を食うほどの活躍を見せるバッグス役の女優ジェシカ・ヘンウィック(AP)

 

実は彼女、この最新作と米マーベル・スタジオの「シャン・チー/テン・リングスの伝説」(昨年9月公開)の両方から熱烈なオファーがあり、両方から「競合作への出演を放棄する場合に限り、オーディションを受けられる」と言われ、悩みぬいた揚げ句マトリックスを選んだとか。「まさに青の錠剤、赤の錠剤、どちらを選ぶかという局面だった」(2021年11月30日付米誌エンターテインメント・ウィークリー電子版)と振り返っています。

 

そもそも「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」から「ルパン三世」、「殺し屋1(イチ)」に至るまで、日本のアニメ映画や漫画の影響を受けた3部作。この最新作でも日本の新幹線が登場(「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」へのオマージュ?)するなど、ウォシャウスキー監督の趣味が炸裂(さくれつ)しています。昨年の邦画「ドライブ・マイ・カー」が欧米で高く評価されるなど、いよいよ時代はアジアなのかもしれません。

 

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筆者:岡田敏一(産経新聞)

 

 

2022年1月7日産経ニュース【エンタメよもやま話】を転載しています

 

 

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