中国、新型コロナ感染拡大でも太平洋で軍事挑発

 

 

防衛省のシンクタンク・防衛研究所は4月10日、昨年1~12月の日本周辺の安全保障環境を分析した「東アジア戦略概観」を発表した。太平洋島嶼(とうしょ)国と関係構築を進めている中国について、第2列島線(小笠原諸島-米領グアム-パプアニューギニア)を越えて西太平洋全域で軍事力を展開する可能性があるとの見方を示した。

 

中国は昨年、台湾と断交したソロモン諸島やキリバスと外交関係を樹立した。パプアニューギニアやフィジーなどには大規模な経済支援を実施している。戦略概観で「台湾と外交関係を結んでいることで寄港できなかった地域にも、中国はアクセス可能になった」と指摘した。

 

 

グアムを背後から狙う

 

また、台湾と外交関係を維持しているパラオに関し、第2列島線の南端に位置することから「仮に中国がパラオと国交を樹立すれば、西太平洋全域での(軍事的な)行動の自由を得る橋頭堡(きょうとうほ)を得ることになる」と明記。今後、米軍の太平洋における拠点のグアムを「後背から狙う戦略も選択肢に入る」と解説した。

 

中国以外では、核開発を進める北朝鮮について、核兵器は相手国の政治指導者を脅す手段であり「北朝鮮の対外戦略の枢要な部分」だと分析した。

 

昨年8月には米露の中距離核戦力(INF)全廃条約が失効し、米露は中距離ミサイル開発に着手している。戦略概観は「東アジアにおいてミサイル分野で軍拡競争が発生する可能性がある」とした。

 

中国・武漢市発の新型コロナウイルスが世界中に広がる中でも相変わらず各地で軍事的挑発を繰り返しており、日本にとっても警戒を緩めることができない状況が続いている。

 

航空自衛隊機は新型コロナの感染が拡大した今年1~3月、領空侵犯の恐れがある中国機に対して152回の緊急発進(スクランブル)を実施し、昨年に引き続き高止まりしている。

 

4月8日には、沖縄県石垣市の尖閣諸島周辺の日本領海に、中国海警局(日本の海上保安庁に相当)の船4隻が侵入した。中国公船の領海侵入は今年6回目。領海外側の接続水域にも連日、中国公船が航行しており、今年1~3月は延べ289隻だった。前年同期比で5割増だ。

 

 

他国の弱みにつけ込む

 

こうした中国の動きについて、河野太郎防衛相は10日の記者会見で「全世界的に新型コロナと戦い、押さえ込もうというときに、こういう状況になっていることは極めて遺憾だ」と強い不快感を示した。

 

今月2日には南シナ海の西沙諸島付近で中国海警局船がベトナム漁船に体当たりし、沈没させたとベトナムメディアが報じた。共同通信によると、米国務省のオルタガス報道官は6日、感染が各国で深刻化して以降も、中国は南シナ海での軍事的な動きを続けていると指摘し「他国の弱みにつけ込んで南シナ海で不法な主張を強めるのはやめるべきだ」と批判した。

 

一方で、中国は積極的に「マスク外交」も展開している。日本を含め感染が拡大している国に医療用マスクや防護服を送り、中国への「信頼」の浸透を図っているとみられる。

 

防衛研究所の担当者は「感染拡大の初期に事実を隠蔽(いんぺい)したという指摘に対し、中国は何も答えていない。疑問を解決しないまま物資供給を進めても信頼を得ていない」と分析している。

 

筆者:田中一世(産経新聞)

 

 

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Author:

Issei Tanaka is a staff writer of The Sankei Shimbun Political News Department, currently assigned to reporting on the Ministry of Defense.

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