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参謀型か政策継続型か 問われる新国家安全保障局長

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秋葉剛男氏

 

国家安全保障局(NSS)が新たなトップを迎え入れようとしている。政府が北村滋NSS局長の後任に、21日まで外務事務次官だった秋葉剛男氏を充てる方針を固めたと産経ニュースを含む各メディアが報じた。

 

NSSは平成26年1月、閣僚で構成される国家安全保障会議(NSC)の事務局として新設された。発足から7年半、安倍晋三政権、菅義偉(すが・よしひで)政権の外交・安全保障戦略を支えてきたことは間違いない。

 

だが、NSS局長とはどのような存在なのか。この問いに対する答えはまだ明確ではない。

 

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特にはっきりしないのが、首相とNSS局長の関係だ。菅政権は昨年10月に発足した際、安倍政権でNSS局長を務めていた北村氏の留任を決めた。これだけを判断材料とすれば、NSS局長は首相交代とともに入れ替わる一心同体型ではなく、事務方トップの官房副長官のように政権が代わっても留任し、政策の継続性を担保するポストだと解釈できた。

 

米国では大統領の交代に伴い、NSCの責任者となる国家安全保障担当の大統領補佐官を交代させることが慣例となっている。バイデン政権のサリバン大統領補佐官は、オバマ政権時代からバイデン氏の側近として知られた人物だ。ニクソン政権のキッシンジャー氏、カーター政権のブレジンスキー氏らは、各政権の外交・安全保障政策を特色づけた参謀として後代まで記憶されている。

 

こうした米国型参謀にとって、カギを握るのは首脳との距離の近さだ。「政権トップの意思」を体して関係省庁をまとめ上げるためには、首脳と参謀が一心同体とみなされる必要がある。

 

その意味で、安倍政権時代にNSS局長を務めた谷内正太郎氏と北村氏は米国型参謀として適任といえた。特に北村氏は第1次安倍政権時代に首相秘書官を務め、NSS局長就任前は内閣情報官として安倍首相に定期報告する存在だった。

 

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NSS関係者は「北村氏が局長になってから物事がスムーズに進むようになった。何か問題が生じると、北村氏が『首相に相談しておく』と言って即座に解決する場面が何回もあった」と明かす。北村氏がNSSに経済班を発足させ、手付かずだった経済安全保障の態勢強化に乗り出せたのも、安倍首相との距離の近さがあったからだ。

 

秋葉氏は安倍、菅両氏の信任が厚く、外務事務次官としては戦後最長の在任期間となった。ただ、安倍、菅両政権で秋葉氏の立ち位置は微妙に変化している。菅政権になって首相と秋葉氏が一対一の「サシ」で話す機会が増えているのだ。

 

産経新聞に掲載された「安倍日誌」と「菅日誌」によると、今年と昨年の1~5月に秋葉氏が安倍氏とサシになったのは1回だったのに対し、菅首相とは10回だった。安倍政権時代は秋葉氏が重要案件について首相と相談する際は、北村氏や今井尚哉首相補佐官が同席することが多かった。

 

今年と昨年では首相の外遊頻度や新型コロナウイルスの感染状況が異なるため、これだけをもって菅首相と秋葉氏の距離が近いと断じるのは早計だ。とはいえ、秋葉氏が第3代NSS局長に就任すれば、米国型参謀に近い存在とみなされる可能性が高くなる。

 

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一方、NSS局長は関係省庁の縦割りを排し、国家安全保障政策のとりまとめを担う存在でもある。NSSが有効に機能する上で局長の出身省庁は少なからぬ影響を及ぼす。

 

NSSが政策判断を行う際に、各省庁にまたがるインテリジェンス機関からの報告は命綱となる。特に警察情報は北朝鮮による拉致問題を解決するために不可欠だ。NSS関係者は「警察庁出身の北村氏が局長になって警察との連携が密になった」と漏らす。何かと外務省に対抗意識を燃やす経済産業省がNSS経済班に協力的だったのは、北村氏が局長だったからとの見方もある。

 

それでは、谷内氏に続き外務省出身者がNSS局長に返り咲けばどうなるか。外務省には大きく分けて2つのタイプの官僚が存在してきた。一つは、同僚や上司に対しても秘密に徹し、大きな取引を成就させようとするタイプだ。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の返還合意や拉致被害者帰国を担当した田中均元外務審議官は、交渉記録も残さない一匹おおかみ型の典型と目される。

 

これに対し、秋葉氏は周囲を巻き込み、チームプレーで成果を目指すタイプといえる。中国課長時代に構築した「戦略的互恵関係」は垂(たるみ)秀夫駐中国大使が考案し、総合外交政策局長、外務審議官としてまとめあげた「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想は市川恵一北米局長のアイデアだと周囲に説明し、スタンドプレーを嫌うことでも知られる。

 

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安倍政権では安全保障関連法の制定や自衛隊を効果的に運用する上でNSSが大きな役割を果たしたが、NSSは安倍政権一代限りの組織ではない。今後のNSSが政策決定過程でどのように機能するかは、菅政権のNSS局長によって大きく左右されることになる。

 

筆者:杉本康士(産経新聞政治部)

 

 

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