新国立競技場、青写真描けぬ五輪後の利用法

 

 

2020年東京五輪・パラリンピックのメインスタジアムとなる新国立競技場が11月30日、完成した。大成建設などの共同事業体(JV)から事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)に引き渡された。整備費は1569億円。東京大会では開閉会式と陸上のほか、五輪サッカーの会場となる。スポーツの祭典の舞台は整ったが、大会後の利用法は依然として青写真が描けていない。新たな日本スポーツ界の聖地となり得るのか。

 

 

暑さ対策の工夫も

 

建築家の隈(くま)研吾氏らが設計した建築デザインは、木と緑にあふれる「杜(もり)のスタジアム」がコンセプトだ。緑豊かな明治神宮外苑の景観に配慮して高さは約47メートルに抑えた。地上5階、地下2階建てで、建築面積は旧競技場の2倍超。建築には日本の伝統技法である「軒びさし」が用いられ、47都道府県から調達した木材が利用されている。

 

ピッチの状態を良好に保つため、天然芝の生育を促す「地中温度制御システム」や、走路にはゴム製で反発力が高く、記録が出やすいとされる高速トラックも施された。暑さ対策として、スタジアム内に風が入り込むような工夫のほか、暑さを和らげるミスト冷却装置や空気の循環を生み出すファンを設け、熱気がこもらないよう配慮した。

 

多くの人が観戦を楽しめる設備も充実。スマートフォンによる会員制交流サイト(SNS)への投稿や動画視聴に備え、無線LAN(Wi―Fi)のスポットを座席下などに設置した。3万人の観客が同時に接続可能という。誰でも観戦しやすいよう、障害者団体のアドバイスも設計に取り入れられ、JSCは「世界最高水準のユニバーサルデザインだ」と胸を張る。

 

12月21日にオープニングイベントを開催し、スポーツでは来年元日のサッカー天皇杯決勝が最初の大会となる。

 

売却計画先送り

 

新国立の後利用法は依然として「霧の中」だ。

 

平成29年11月、政府の関係閣僚会議で大会後は球技専用スタジアムとする方針を決めた。近隣にサブトラックを設置する余地がなく、陸上の大規模大会を開催できない。さらに、世界の有名な球技専用スタジアムは観客席とピッチが近いことが特徴。スタジアムに陸上トラックを残せば、ピッチが観客席から遠くなり、「試合の臨場感が損なわれる」との懸念があることなどが理由だった。

 

しかし、陸上トラックを撤去するなどの改修作業には多額の費用がかかることが判明。3年前に年間約24億円と試算された維持管理費の捻出は簡単ではなく、収益の柱と見込むコンサートについても、陸上トラックを残した方がステージなどの設置で傷んだ芝のメンテナンス費用が抑えられるとの意見が今年になって強まった。

 

事実上、球技専用か陸上トラック併存かの議論は暗礁に乗り上げている。

 

民間事業者に運営権を売却する計画も同様だ。当初は今年半ばにも事業方式や応募要件などの計画を固める方針だったが、東京大会での保安上の理由で詳細な図面などを開示できず、運営権取得に関心を持つ民間事業者側から「採算性などを判断できない」との声が噴出。売却計画は来年秋以降に先送りとなった。

 

筆者:森本利優、佐々木正明(産経新聞)

 

 

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Masaaki Sasaki

Author:

Masaaki Sasaki is a staff writer of The Sankei Shimbun, the former chief correspondent of Moscow Bureau and Rio de Janeiro Bureau of The Sankei Shimbun.

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