日本の韓国政策の対米説明が不十分

 

米政府は、韓国の文在寅政権が日本との軍事情報保護協定(GSOMIA)の廃棄方針を決め、日韓対立を軍事・安全保障分野に波及させたことを強く批判する立場を鮮明にした。ただ、悪化する日韓関係全般について、トランプ政権や有力議員が日本の主張を十分に理解しているとは言い切れず、日本政府としては米国の理解を深める一層の努力が求められる。

 

 

韓国の軍事協定廃棄に米が反発

 

主に北朝鮮の軍事動向に関する情報を日韓が交換するのに役立つGSOMIAの廃棄については、オータガス国務省報道官がトランプ政権の公式の反応として「深い失望と懸念」を表明し、その理由の一つに「(在韓)米軍へのリスクが増す」ことを挙げた。

 

続いてシュライバー国防次官補(インド太平洋安全保障担当)が講演で「文政権は北東アジア情勢の深刻さを分かっていない」と批判し、韓国に廃棄方針の撤回を求めた。

 

さらに、日本の複数のメディアによると、フランスで終わったばかりの主要7カ国(G7)首脳会議で、トランプ大統領は「文は信用できない」「金正恩(朝鮮労働党委員長)は文をうそつきだと言った」「なぜあんな人が大統領になったのか」と、文大統領をののしったという。米軍に危険を及ぼすような決定を下す者は許せないという強い意思表示であろう。

 

米国では、野党民主党のエンゲル下院外交委員長(ニューヨーク州)もGSOMIAの廃棄決定に「深い懸念」を示す声明を出し、「(日韓間の)緊張をエスカレートさせて安保協力を妨げるのは無責任である」と文大統領を非難した。

 

 

輸出管理強化策は理解されず

 

ここで留意すべきは、米国が日韓対立全般について日本の肩を持っているのでは必ずしもないということだ。日本が韓国を輸出管理の優遇対象から外し、韓国も報復のため同様の措置を取り、互いに輸出管理を強化した件では、米国の立場は中立である。

 

シュライバー次官補は、日韓両国の輸出管理強化には「政治的動機」があるようだと述べ、「好ましいのは(両国が輸出管理強化を)互いに解除し、正常な貿易関係に戻ることだ」と語った。

 

日本政府は韓国への輸出管理を強化した理由について、適切な輸出管理を行うための協議に韓国が応じず、輸出管理上の「不適切な事案」が発生したためであって、戦時中の朝鮮人労働者への補償を日本企業に命じた韓国最高裁判決を文政権が放置していることへの対抗または報復措置ではないと説明している。シュライバー次官補が「政治的動機」に言及したことは、日本政府の説明がトランプ政権に浸透していない疑いを生む。

 

エンゲル委員長も以前の声明で、日本の対韓輸出管理強化に対し、「日本政府が貿易活動を利用して韓国に報復することを選んだのには失望させられる」と述べ、日本の行動を「報復」と理解していた。

 

トランプ政権と米議会に対する在米日本大使館の政策説明に手抜かりはないか。

 

筆者:冨山泰(国基研企画委員兼研究員)

 

国家基本問題研究所(JINF)「今週の直言」第616回(2019年9月2日付)を転載しています。

 

 

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Author:

Yasushi Tomiyama is a senior research fellow and Planning Committee member at the Japan Institute for National Fundamentals and a former foreign news editor and bureau chief in Washington, D.C., London and Bangkok for the Jiji Press.

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