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日本のハイテク技術爆買い中国 浮かび上がる弱点

Noboru Ikeda

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中国が日本のハイテク技術を買い込んでいる。自動車やIT機器などのほか、軍事分野にも欠かせない半導体をつくるための製造装置だ。購入額は4月に前年同月比約2・3倍に急増するなど高い伸び率が続く。同装置は、米中対立の激化に伴いトランプ前政権が米国製品の輸出規制に動いた経緯があるが、米国に並んで世界トップ水準にある日本の装置技術は中国に流入しているのが実態だ。安全保障上の懸念はないのか。

 

 

国産化急ぐ習政権

 

財務省の貿易統計によると、日本から中国への半導体等製造装置の輸出額の伸び率は1月以降、30%超~60%超を記録。4月の突出した増加もあり、6月までの上半期実績(速報)は66・4%増の高水準だった。

 

背景には世界的な半導体不足の解消に向けた増産投資と、経済安全保障の観点から自国内に供給網を確保する半導体の国産化の動きがある。半導体業界の国際団体SEMIのまとめでは、2021~22年の半導体工場の着工件数は世界で29件と過去10年で最高水準に達する見通しで、製造装置の発注を競うような様相だ。

 

特に米国と覇権を争う中国は、習近平政権がハイテク産業の国産化を強力に推進する国家戦略「中国製造2025」を進めているため、半導体製造装置の確保を急いでいるとみられる。

 

 

米中対立でも拡大

 

もっとも、この中国からの追い風を売り上げ増につなげているのは日本の装置メーカーだけではない。半導体製造装置世界最大手の米アプライド・マテリアルズの直近決算(2~4月期)をみると、地域別売上高で中国の比率が33%と前年同期比で4ポイントも上昇している。米中対立の最中、米装置メーカーも中国ビジネスを拡大しているわけだ。

 

実は、トランプ前政権の輸出規制は選択的な措置が取られている。

 

半導体は回路の線幅が狭いほど性能が高まる。現在の量産技術の最先端は5ナノ(ナノは10億分の1)メートル。米商務省は、中国の半導体受託生産最大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)などを対象とした輸出規制で、最先端を含む回路線幅10ナノ以下に対応する製造技術を原則禁輸とした一方、その他は個別判断とし輸出の扉を完全には閉じていない。この余地が米メーカーの中国売上高の増加につながったのだろう。

 

半導体の搭載数が増える電気自動車(EV)の市場拡大や第5世代(5G)移動通信システム向けなど、半導体の世界需要は今後も高水準が続く見通し。SEMIは製造装置の販売額が22年に過去最高の1013億ドル(約11兆2000億円)以上に達すると予測しており、米中対立が大きな障害とならなければ日米装置メーカーは好調な業績が期待できる。

 

だが、この状況が続くかは予断を許さない。

 

 

技術流出への対応必要

 

安全保障貿易情報センター(CISTEC)は4月末にまとめた米中の規制動向と留意点の中で、米議会に日本からの半導体製造装置の対中輸出を問題視する声があることを指摘。さらに、バイデン政権が国防権限法に基づき、日本など同盟国と構築するハイテク技術の協力の枠組み「多国間半導体セキュリティー基金」では、米国と同等の厳しい輸出管理が求められる点を注意している。

 

7月中旬には、米有力紙のニューヨーク・タイムズとウォールストリート・ジャーナルがそろって、バイデン政権が、オランダ政府に対して同国の大手半導体製造装置メーカー、ASMLの先端技術の対中輸出を認めないよう働きかけていると伝えた。

 

極端紫外線(EUV)露光装置というASMLの先端技術は5ナノ以下の半導体生産に不可欠で、トランプ前政権も対中禁輸を要請していた。半導体の先端技術が中国の手に渡ることを許さない強硬姿勢はバイデン政権も同じなのだ。

 

半導体の製造装置にはさまざまな種類があるが、日本メーカー最大手の東京エレクトロンは塗布現像装置という技術で約9割の世界シェアを持ち、EUV露光装置向けではシェア100%を誇る。

 

同社は6月、ASMLと、回路線幅3ナノ以下に対応する両社の次世代装置を一体化させる共同研究でも合意しており、東京エレクトロンを筆頭に世界の最先端を走る日本の装置技術の対中輸出には当然、バイデン政権も神経をとがらせているとみていいだろう。今後、日米両政府が合意した半導体供給の協力関係が強化される中、国内各社は装置輸出はもちろん、人材を含めた技術の流出対策で新たな対応を迫られる可能性がある。

 

 

遠い半導体の国産化

 

もっとも、日本など海外の半導体技術の購入を増やしている中国の動きは、技術の国産化が容易ではないことの裏返しでもある。

 

ニューヨーク・タイムズは専門家の分析として、中国が独自にASMLの先端装置と同じ水準の装置をつくるには少なくも10年かかると指摘。また、米ボストンコンサルティンググループと半導体産業協会が今春まとめた調査リポートによると、現在の半導体の世界供給網の機能を自給自足で構築するには少なくとも1兆ドルを要し、その結果、半導体の価格は大幅に上がってしまうという。完全な自給自足は現実的ではないということだ。

 

米調査会社のICインサイツは25年の中国の半導体自給率は、政府目標の70%に対し、19・4%にとどまると予測している。日本の先端技術の流出への警戒は怠れないが、中国の半導体国産化への道程は遠い。

 

筆者:池田昇(産経新聞経済部)

 

 

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Noboru Ikeda is a reporter in the Economic News Department, of The Sankei Shimbun.

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