米空母をコロナ感染から救え

 

米海軍の原子力空母で新型コロナウイルスの感染が相次いで確認され、これまでに「セオドア・ルーズベルト」をはじめ4隻の乗組員に感染者が出た。米空母は中国、北朝鮮、イランなどの脅威を抑止するために枢要な作戦行動を担っており、米空母のウイルス感染が拡大すると、インド太平洋地域を含む世界の安全保障に深刻な影響を与えかねない。そこで、空母での感染防止のため、次亜塩素酸水の活用を米国の専門家に提案したところ、前向きの反応を得た。

 

 

「3密」の艦内で次亜塩素酸水が有効

 

次亜塩素酸水は、食塩水を電解して得られる次亜塩素酸ナトリウムにクエン酸などを加え、わずかに酸性になるように調製したものだ。次亜塩素酸の殺菌力はこの状態が最も強く、人体への影響も無いとの研究成果が多数公表されている。次亜塩素酸水は既に、食品産業で生野菜の洗浄や調理器具の殺菌に使われている。大手家電メーカーは次亜塩素酸水を噴霧する空気清浄機を販売している。この次亜塩素酸水を空母の空調機器に噴霧するか、超音波加湿器に入れ、コロナウイルスを不活性化(破壊)するとよい。

 

筆者は「セオドア・ルーズベルト」の母港である米カリフォルニア州サンディエゴで、空母を見学したことがある。艦長は貴賓室のような格調高い部屋をあてがわれているが、階級が下がるにつれて部屋は狭くなり、多くの乗組員は、かつてのブルートレインの寝台車のような蚕棚のベッドに寝ている。窓もない密閉された空間で、密集する乗組員が、密接状態で会話を交わすという「3密」の条件が満たされ、1人の感染者がいれば、あっという間に集団感染が発生する。狭い原子力潜水艦も同様であろう。個室になっていた大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」よりもはるかに条件が悪い。

 

 

米専門家から前向きな反応

 

次亜塩素酸水は空母の艦内に漂う微細な霧状の水滴(マイクロ飛沫)に含まれるウイルスの空間除菌に使える。飛沫感染を防ぐためのマスクやゴーグルの殺菌にも使える。しかも、次亜塩素酸ナトリウムと違って、取り扱う際にゴム手袋を着用する必要はないし、付着しても水で洗い流す必要がない。次亜塩素酸水は空母での感染を防ぐ最も有効な手段と言ってよい。

 

そこで、国際原子力機関(IAEA)と経済協力機構・原子力機関(OECD/NEA)が共同で運営している職業被曝情報システム(ISOE)の米国人幹部にメールを送り、原子力発電所や空母での次亜塩素酸水の活用を提案した。幹部からは即座に、米国の原子力規制委員会(NRC)や国防総省系シンクタンクの所長に伝えるという返事が来た。

 

2011年の東日本大震災では、横須賀を母港とする米空母「ロナルド・レーガン」が「トモダチ作戦」で被災者救援に駆けつけてくれた。同空母は今回ウイルス感染者を出した4隻のうちの1隻である。感染防止策を提案することで、トモダチ作戦の恩返しをしたい。

 

筆者:奈良林直(国基研理事・東京工業大学特任教授)

 

 

国家基本問題研究所(JINF)「今週の直言」第673回・特別版(2020年4月13日)を転載しています。

 

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Author:

Tadashi Narabayashi is a specially appointed professor at the Tokyo Institute of Technology and a director at the Japan Institute for National Fundamentals.

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