金正恩氏は心臓手術後、療養中か

 

北朝鮮の最高指導者、金正恩労働党委員長の健康状態について、様々な情報が飛び交っている。現段階で一番可能性が高いと思われるのは、最近信頼できる筋から入手した「4月12日に心臓の手術を受け、東部・元山の特閣(専用別荘)で療養している。元気な姿を公開できるほど回復してもいない」である。

 

 

「重篤」ではない

 

米情報機関は4月17日までに、金正恩氏に異変があったという情報をつかんでいたようだ。それが様々な形で伝わって、東京でも情報関係者が精力的に確認作業を行い、18日には私の耳にもその話が入ってきた。21日、米CNNが、手術をして重篤だとの情報があることを米政府当局者の話として伝えた。この報道で一気に騒ぎが大きくなり、一部で死亡説や植物人間説も出た。

 

韓国政府は「北朝鮮に特異な動きがない」「金正恩氏は地方にいる」として、死亡説を否定した。韓国の情報機関は、金正恩氏が現在、元山の特閣にいるという確実な情報を持っている。手術をしたのかどうかについては明確な言及がない。韓国国家情報院傘下の国家安保戦略研究所の所長が、金正恩氏が息を切らして歩く姿を韓国の専門医が分析した結果として、「心臓の弁膜に疾患がある」と明言した。

 

トランプ米大統領はCNN報道について、過去の文書に基づく誤報だと発言した。誤報が重篤だという部分だけなのか、手術をしたことまで含むのかは、明確でなかった。大統領発言は、金正恩の心臓手術は事実とする冒頭の情報と矛盾しない。米政府が最初つかんだ「手術して重篤」という情報を基にCNNは報道したが、その後、重篤でないという米政府の新情報をCNNは知らなかった、つまり、手術したのは事実だが重篤とした部分が誤報という意味に解釈できる。米軍幹部は、金正恩氏が今も核兵器を含む北朝鮮軍をコントロールしていると述べた。

 

日本政府は公式な見解を明らかにしていないが、23日の東京新聞は、①金正恩氏は新型コロナウイルスへの感染を避け、自主隔離のため元山にいる ②元山で何らかの治療を受けた―という日本政府の見方を伝えた。

 

 

2月にはステント手術

 

中国医師団が訪朝したという報道が26日に北京発であった。一方、中国の医師は入っていないという否定情報もある。北朝鮮はいま、中国を一番警戒していて、金正恩の容態に関する情報を中国に絶対に漏らすなという指令が出ているというのだ。

 

今回の手術は突然のことで、外国の医師を呼ぶ時間がなく、北朝鮮の医師が執刀したという。だが、2月にフランスの心臓専門医が訪朝して金正恩氏にステント手術(心臓の血管に金属の管を通す手術)をしたことはほぼ間違いない。最高指導者の健康は極秘であり、特に北朝鮮当局は徹底的な情報管理を行っている。米国と中国はかなりの情報を持っているようだ。金正恩氏は27日まで16日間も公の場に出てきていない。

 

筆者:西岡力(国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授)

 

 

国家基本問題研究所(JINF)「今週の直言」第677回・特別版(2020年4月27日)を転載しています。

 

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Tsutomu Nishioka

Author:

Tsutomu Nishioka is a senior fellow and a planning committee member at the Japan Institute for National Fundamentals and a visiting professor at Reitaku University. He covers South and North Korea.

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