韓国発展のルーツは日本資産

 

韓国の大手財閥に「SKグループ」というのがある。通信大手でもあるので、スマホ王国の韓国では「SK」はもっとも身近な企業名の一つである。

 

以前は「鮮京グループ」といい「鮮京(ソンキョン)」のローマ字の頭文字から「SK」になった。母体は繊維会社の「鮮京織物」で、そこから化学繊維の石油化学を手がけ、後に半導体や通信事業などに進出して韓国有数の大企業集団になった。

 

ところで「鮮京織物」は元は日本統治時代の日本人の会社だった。「鮮京」という名前は「鮮満綢緞(ちゅうたん)」と「京都織物」が合併してできたことに由来する。いかにも日本的なネーミングだが、1945年の敗戦で日本人が撤収させられた後、従業員だった韓国人に払い下げられ韓国の企業になった。

 

これが今をときめく「SKグループ」のルーツだが、そんなことなど今の韓国人は誰も知らない。それにしても“反日”を持ち出しては何でもかんでもケチをつけたがる韓国で、よくその企業名を維持してきたものだと感慨深い。「SKグループ」に感謝したいところだ。

 

実は「SKグループ」のように、日本が残した企業を受け継いで発展した韓国企業は今でもたくさん存在する。それは北朝鮮も同じだ。先年、中朝国境地帯の中国側を旅行したおり、鴨緑江下流で対岸の北朝鮮・新義州(シニジュ)の街に高くそびえる煙突を指して、北朝鮮が故郷のガイドは「あれは日本時代の王子製紙ですよ」と教えてくれた。

 

今回、こんな話を書く気になったのは最近、李大根(イ・デグン)著『帰属財産研究』(2015年刊)というすごい本を読んだからだ。著者から昨年、頂いたのだが韓国語で約700ページもあり、新型コロナウイルスによる外出規制で在宅時間が増えたおかげでやっと読み終えた。著者はソウル大出身で成均館(ソンギュングァン)大名誉教授(世界経済論専攻)。京都大留学の経験もある。

 

この本は1945年8月の敗戦で日本人が朝鮮半島に残した財産に関する初めての総合的な研究書である。資産は公的、私的あるいは企業、個人すべてを含むもので、その形成過程から戦後(解放後)の処分過程までが各種統計によって詳細に分析されている。

 

日本人資産はまず韓国に進駐した米軍によって接収され戦時賠償的に米国に帰属した後、韓国側に譲渡された。韓国では後に“敵産”と称され国有化や民間への払い下げが行われた。

 

資産総額は当時の通貨で52億ドル、あるいは約800億円といった数字が算出されているが、金融専門家に聞くと今なら数千億ドル(数十兆円)を下らないだろうという。その形成過程についても圧倒的に日本による投資、開発の結果であって、韓国の公式史観である収奪論を全面的に否定している。

 

そして接収された日本企業は2373社に及び、それが韓国所有となってその後の経済発展の基礎になったという。韓国が手にした膨大な日本資産を考えれば、最近の徴用工補償問題など今さら韓国で日本企業の資産差し押さえもないだろう。いわゆる過去補償問題はすべて韓国内で処理すれば済む話なのだ。

 

筆者:黒田勝弘(産経新聞ソウル駐在客員論説委員)

 

 

2020年6月7日付産経新聞【から(韓)くに便り】を転載しています

 

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Author:

Katsuhiro Kuroda is a visiting editorial writer in Seoul for the Sankei Shimbun.

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