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Japan's Constitutional Democratic Party leader Yukio Edano waves his hands during an election campaign rally in Tokyo, Japan, October 10, 2017. REUTERS/Issei Kato

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31日投票の総選挙で、経済政策に関する重要論点は「成長」と「分配」をめぐる与野党の立ち位置の違いである。日本経済が30年近くに及ぶ低成長に喘ぐ中、立憲民主党の枝野幸男代表は、かつての民主党と同じ轍を踏むことを厭わず、「分配なくして成長なし」を掲げる。

 

 

成長こそがパイを拡大できる

 

経済成長が先か、所得分配が先か、と問われれば、経済学的には、前者が先であることは自明のことである。なぜなら、イノベーションに基づく経済成長によってのみ経済全体のパイ、すなわち付加価値である国内総生産(GDP)を拡大できるからである。従って、もし先に所得分配を行って、資源配分の効率性を損なえば、経済成長どころか、経済全体のパイを縮小させかねない。成長と分配の好循環は、分配するパイがあってこそ構築できる。

 

日本経済の長期低迷の主因は、格差拡大でもなく、また物価が緩やかに下落するという意味でのデフレでもなく、労働生産性上昇率と潜在成長率(景気循環の影響を除いた成長率)が低下傾向を続ける「経済の潜在力の低下」である。

 

日本の時間当たり労働生産性は経済協力開発機構(OECD)加盟37カ国のうち21位で、1970年以降、下位に甘んじている。潜在成長率はバブル期にあたる1990年頃まで4%台で推移していたが、バブル崩壊以降大きく低下し、現在まで1%台が続いている。

 

従って、格差縮小を目指す再分配も重要であるが、日本経済の現状を考えれば、最優先に考えるべきはパイの分配でなく、パイを拡大させる成長政策の実行である。

 

 

格差は拡大していない

 

枝野代表は分配を優先する理由として、格差の拡大を強調する。しかし、労働分配率は30年近く横ばいであったが、2021年4~6月期では52.2%となり、長期トレンド水準を上回っている。また、再分配ジニ係数(個人間の所得分配の偏りを示す指数)も2005年以降は緩やかに低下傾向にあり、2017年は1990年時点とほぼ同水準である。

 

さらに、日銀が発表した2020年4~6月期の資金循環統計によると、6月末時点で「家計」が持つ金融資産計は1992兆円で、そのうち現預金の残高は1031兆円であったが、2021年6月末時点では1072兆円に拡大している。コロナ禍での特別定額給付金が、家計の金融資産の残高を拡大させたことは明白である。給付金の約3割が支出に回されたに過ぎないことは検証されている。

 

成長によらないパイの分配は、一層の国債増発を促すことにつながる。つまり、分配によって増えた預貯金は、特に景気低迷期には銀行の国債運用を増やし、日銀の国債購入によって、政府に資金還流するという構図を定着させる。これは、国債依存型の経済運営を容易にし、経済危機意識を和らげ、経済成長路線、つまり痛みを伴う構造改革を避ける口実を与えることになる。

 

新政権には、今度こそ、安易な再分配政策や財政・金融政策によらない、イノベーションに基づく経済成長戦略を最優先とすることを期待したい。

 

筆者:大岩雄次郎(国基研企画委員兼研究員)

 

 

国家基本問題研究所(JINF)「今週の直言」第840回(2021年10月18日)を転載しています

 

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