~~
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の危険がさらに高まっている。
米政府は約8500人の米軍部隊に対し、欧州への派遣に備えるよう命じた。また、ロシアが侵攻した場合、ハイテク部品などの対露輸出禁止措置や金融制裁を発動する方針を明らかにした。
ウクライナへの侵攻は主権国家に対する明白な侵略である。岸田文雄首相は、侵攻を防ぐためにも、米国と歩調を合わせ経済制裁の検討を表明すべきだ。
侵攻した場合は、間髪入れずに米国とともに厳しい制裁を科すべきである。そのための態勢を早急に整えなければならない。
バイデン米大統領は25日、ロシア軍が侵攻すれば先の大戦後で最大の侵略になるとし、「世界を変える」との危機感を示した。ロシアのプーチン大統領個人への制裁を検討する考えも表明した。欧州首脳との会談では、ロシアに「経済的に大きな代償を払わせる」措置などを協議した。
問題は、この世界的危機に際して日本の動きが鈍いことだ。
岸田首相は21日のバイデン氏との会談で、ウクライナ侵攻に「強い行動」を取ることを確認した。だが、26日の衆院予算委員会で岸田首相は「露軍増強の動きなどに重大な懸念を持って注視している。先進7カ国(G7)の枠組みを重視しながら適切に対応する」と述べるにとどまった。「強い行動」について、何ひとつ説明できないのはどうしたことか。
2014年にロシアがウクライナ南部クリミア半島を併合した際の煮え切らない日本政府の対応を繰り返してはならない。日本政府は査証(ビザ)協議の停止など米国はおろか、欧州連合(EU)よりも腰の引けた対応で、ロシアに実害の及ばない措置だった。
安倍晋三政権下の当時、北方領土の返還交渉を抱え、プーチン露政権との関係悪化を避けたいとの思惑があったとされる。だが、北方領土はソ連が大戦末期の混乱に乗じて侵攻し、ロシアが不法占拠している。主権と領土の侵害という点でクリミアやウクライナと変わらない。日本こそ、ロシア批判の先頭に立つべきである。
アジア地域では中国が、他国の領土や領海を脅かしている。中国はロシアに対する各国の対応をみている。岸田首相には、力による現状変更を認めないという日本の強い姿勢を示してもらいたい。
◇
2022年1月27日付産経新聞【主張】を転載しています