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日本にとっての脅威は中国だけではないことが改めて示された。
北朝鮮が1月5日、弾道ミサイルを日本海に向けて発射した。日本の排他的経済水域(EEZ)の外側に落下し、船舶や航空機に被害はなかった。
米インド太平洋軍は、弾道ミサイルだったと発表した。国連安全保障理事会決議違反である。北朝鮮は発射をやめ、核・ミサイル戦力を放棄しなければならない。
岸信夫防衛相は「北朝鮮は令和元年5月以降、約40発もの頻繁な発射を繰り返しており、目的がミサイル発射技術の向上にあることは明らかだ」と指摘した。岸田文雄首相が遺憾を表明したのは当然である。
気にかかるのは、今回の発射内容について、日本政府が早い段階での判断を示さなかったことだ。北朝鮮が開発を進めている、変則軌道の弾道ミサイルや極超音速ミサイルといった捉えにくいミサイルだった可能性がある。これらの実戦配備が進めば、日本のミサイル防衛(MD)網での迎撃は難しい。核弾頭や生物化学兵器が搭載される恐れもある。
独裁者が支配する北朝鮮の核・ミサイル戦力は日本にとって重大な脅威である。
日本は軍事研究を進めてMD能力の抜本的な向上を図るべきだが、それには相当な年月がかかる。それまで国民の生命を危険にさらし続けていいわけがない。
岸田首相は今回の発射を受け、防衛省・自衛隊などに、不測の事態に備え万全の態勢をとるよう指示した。それは妥当としても、岸田首相には他にも語るべきことがあるのではないか。
北朝鮮による対日攻撃を抑止するためには、敵基地攻撃能力の保有が欠かせないと国民に説くことだ。米軍に頼るだけでは十分ではない時代である。
岸田首相は、昨年9月の自民党総裁選で敵基地攻撃能力の保有を「有力な選択肢」と表明した。
その結論が出るのは、今年12月の国家安全保障戦略などの改定とみられている。国民の生命が脅かされているのに結論まで1年以上もかけるのはいかにも遅い。
北朝鮮のミサイル発射だけを見ても敵基地攻撃能力の保有が必要なのは明らかではないか。岸田首相には年末を待たずに、敵基地攻撃能力保有の方針を決断してもらいたい。
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2022年1月6日付産経新聞【主張】を転載しています