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台湾の国際機関への参加をめぐって中国の圧力が強まる中、11月12日に神戸市で開かれた「日台交流サミットin神戸」開会前に、駐大阪中国総領事館の職員を名乗る人物から、主催者らに対し、中止要請などの電話が複数回あったことが分かった。中国側の圧力といえるが、今回で7回目となる同サミットは中止に追い込まれるどころか、過去最多の約510人が参加。中国側の圧力によってむしろ参加者は増えたという。
「ツイッターを見た」市議名指しの恫喝
「台湾は中国の一部であり、内政干渉だ」
複数の神戸市関係者によると、10月中旬、「中国総領事館の主任クラス」と名乗る人物から、市長室にこんな内容の電話があった。同市議会が、同月25~29日に兵庫県姫路市で開催された世界保健機関(WHO)西太平洋地域委員会への台湾のオブザーバー参加を実現するため、必要な措置を講じるよう国に求める意見書を全会一致で採択したことに対する抗議だ。
この際、その人物は「日台交流サミットin神戸」にも触れ、中止を要請。この電話の件は市長室から市議会に伝えられた。同様の電話はサミット直前の11月11日にもあり、神戸市当局のサミット参加を控えるよう求めたという。
「圧力めいた行為は今回だけではない」。同サミット実行委員会事務局長で全国日台友好議員協議会の副理事長も務める上畠寛弘・神戸市議はそう明かす。昨年3月、同市議会が台湾のWHOなどへのオブザーバー参加を求める意見書を採択した際も、総領事館の副総領事を名乗る人物から市役所に電話があり、「上畠氏のツイッターを見たのだが」と断った上で市議会を批判したという。
「確かに、意見書採択についてツイートしたが、そんなことはほかの公開情報でも分かること。わざわざ私を名指しするのは、『監視してるぞ』という恫喝(どうかつ)にほかならない」と上畠氏はいう。
大量の無言電話、リツイート、怪文書…
上畠氏は日常的にツイッターなどで日台友好に関する情報発信や中国批判を展開している。そのためか、周辺で不審な事象が相次いでいるという。
「私が何かツイートすると、必ず当日か翌日に非通知の電話が事務所にかかってくる。しかも立て続けに。出るとすでに切れているか無言というのがほとんどで、仕事にならない」
たまに通話できても、相手は名乗らず、いきなり「あなたがやっていることは間違っている」とたどたどしい日本語で切り出し、「何のことを言ってるのか」と問いただすと、「自分の胸に手を当てて考えてみろ」と一方的に話して電話を切る。
また、ツイッターで台湾や中国に触れるたびに大量の誹謗(ひぼう)中傷のリツイートがあり、「その多くが、ごく最近に取得したとみられるアカウントだった」。匿名の手紙や怪文書も多く、「さすがに『死ね』とか『殺す』とかの文言はないが、『アホ』『バカ』の類いばかり」という。
「電話もリツイートも怪文書も発信元は特定はできないが、いずれもツイート後に間を置かずに起きている」
サミットでは圧力が逆効果に
中国側からとみられる「圧力」にもかかわらず、11月12日に神戸市内のホテルで開かれた同サミットには、27都道府県の地方議員約360人、国内駐在の台湾関係者約60人など過去最多の計約510人が参加した。
同サミットに出席した台北駐日経済文化代表処の謝長廷代表は「日本人の熱い友情に感謝する」とあいさつ。日本と台湾の友好関係への圧力や主権に対するいかなる侵害も認めないなどとする「神戸宣言」を採択し、成功裏に終わった。
宣言の起草にかかわった上畠氏はこう総括する。
「中止要請があった後、当初からの参加予定者に加え、100人以上の地方議員が『圧力に屈してはならない』と新たに参加を表明してくれた。圧力が何の効果もないどころか、逆に日本人の魂を奮い立たせる結果となったことを、中国側も思い知ったのではないか」