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香川県東部に位置する東かがわ市が、中国共産党幹部の子弟らが通うエリート学校「北京市海淀外国語実験学校」との交流中止を決めた。市民にきちんと説明しないまま交流話を進めたことが後になって発覚し、市を二分する大問題に発展していた。

 

何しろこの学校、幼稚園から小・中・高校生の約6千人が学校内で寮生活をし、共産党幹部を養成するため、IT(情報技術)、語学、芸術、スポーツ分野での英才教育に力を入れ、人民解放軍さながらの軍事訓練を行っている。

 

それが東かがわ市の廃校を拠点とし、市のお膳立てで過疎の町に分校を作ろうとしていたのだ。将来的には海淀関係者による集団移住の可能性も指摘されていた。何も知らされていなかった地元住民が不安がるのも無理はない。

 

昨年12月16日、東かがわ市議会定例会で答弁に立った上村一郎市長は、「海淀側の理事長と話し合いを重ねた結果、今後は交流を実施しないことになった」と明言した。理由については、コロナ禍とともに、「中国を取り巻く国際情勢について懸念せざるを得ない状況であり、大変危惧している」からだと語った。同時に、異文化交流で多様な価値観に触れることの重要性についても述べた。

 

それより5カ月前の7月19日、市長室を訪ね、上村市長にインタビューした際は、「国際情勢に鑑み、このまま中止もあるし(再開も)あり得る」とし、交流の継続に含みをもたせていた。それを考えれば大きな方向転換である。

 

議会側にも、交流の継続を期待する向きが少なくなかった。昨年12月16日の定例会で質問に立った田中貞男市議は「私としては、交流中止の決定は非常に残念でならない」と述べるなど、未練たっぷりの心境を隠そうとしなかった。

 

田中氏にも7月30日、電話で話を聞いている。田中氏は「今の世の中、中国抜きで経済が回るわけがない。他の自治体も国際交流しているのに、なぜ東かがわ市ばかりがダメだと言われなければならないのか」とぼやいていた。

 

上村市長も語っている通り、地域の活性化を図る自治体が教育上の観点から国際交流を図ることを否定するものではない。ただ、それには地元住民の理解と相手を選ぶ識見が欠かせない。東かがわ市が投げかけた問題は、国際交流を考える他の地方自治体にとっても人ごとではないのである。

 

筆者:佐々木類(産経新聞論説副委員長)

 

 

2022年1月18日付産経新聞【風を読む】を転載しています

 

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