Investigating explosion damage to mosque in Kunduz Afghanistan (October 8, AP)

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茂木敏充外相は9月8日、日本はアフガニスタンや周辺国に総額約2億ドル(約220億円)の人道支援を行う用意があると表明した。新聞各紙はこれを報じたものの、疑問視したり、問題を提起したりする論評は全くなかった。異様である。

 

アフガンは今、イスラム原理主義勢力タリバンという武装組織によって実効支配されている。タリバンはアフガン国民に支持され選ばれた代表ではない。武力と恐怖で人々を支配しているのだ。

 

国連のグテレス事務総長もアフガン支援はタリバンの関与なしには不可能だと認めている。こちらがいくら人道支援のつもりでも、それは必ずタリバンの手に渡るのだ。これはタリバン支援であり、タリバンによるアフガン国民の人権侵害、抑圧、虐殺に加担することを意味するのではないかという意見があって当然である。

 

 

ところが日本ではメディアや文化人、専門家からとにかく支援しろという声だけがあがる。

 

毎日新聞の15日付夕刊は、「『タリバンのアフガン』への支援 中村哲医師の志継ぐには」という記事で元外相の田中真紀子氏と歌手の加藤登紀子氏が人道支援の必要性を強く主張する意見を掲載し、「経済制裁より人道支援を」とまとめている。

 

朝日新聞デジタルは17日、支援をしなければアフガンは内戦になりタリバンは中国に接近すると主張する上智大学教授、東大作氏のインタビューを掲載した。しかし、すでにアフガンは一部内戦状態にあり、タリバンは中国との関係強化を明言している。日本が支援すれば治安が回復しタリバンは中国と縁を切るなどと思っているとすれば荒唐無稽だ。

 

 

同デジタルの18日には日本国際ボランティアセンター前代表理事、谷山博史氏の「日本はタリバンとの対話の窓口を作り、国際社会との仲介に向けたイニシアチブを取るべき」「タリバンを孤立させるな」という主張を掲載した。しかし、谷山氏が心配せずともタリバンにはすでに中露という強力な味方がいる。

 

日本は破綻国家や独裁国家にも多額の支援をしているが、常日頃政府批判に熱心な毎日も朝日もこれに関してはほとんど批判しないどころか、むしろどんどん支援しろと後押しする。彼らは日本国民の税金が独裁者の手に渡り人々の抑圧に利用される可能性について、なぜ全く懸念しないのか。私には人道支援という美名のもとに日本国民の支払った税金が独裁国家に投入されるのを、彼らが喜んでいるように見える。

 

 

筆者:飯山陽(イスラム思想研究者)

 

 

2021年10月10日付産経新聞【新聞に喝!】を転載しています

 

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