日本の「恐竜時代」が面白い 新種、世界的発見が次々と
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日本の「恐竜の世界」に注目が集まっている。兵庫・淡路島で見つかったヤマトサウルスは、長く繁栄した恐竜の進化のカギが日本を含めた東アジア沿岸部にあるという大発見だった。このほか、日本の恐竜研究に新たな知見が加わる発見も相次ぐ。恐竜が繁栄した時代に日本はどんな環境にあり、どんな生物が暮らしていたのか。その謎の一端に迫る。
日本は進化種と共存する「レフュジア」だった
兵庫県の淡路島で平成16年に見つかった恐竜の化石が植物食恐竜ハドロサウルス科の新属新種と分かり、今年4月、「ヤマトサウルス・イザナギイ」と命名された。兵庫古生物研究会代表の岸本眞五さん(72)=同県姫路市=が16年5月、淡路島南部の洲本市にある約7200万年前の地層から下顎の一部の骨などの化石を発見した。
同県立人と自然の博物館などのチームによる調査で歯並びの特徴などから同科の新属新種と判明。全長は最大約8メートル、体重は約5トンと推測されている。
ハドロサウルス科は平たいカモのようなくちばしを持ち、白亜紀で最も繁栄した植物食恐竜で、カモノハシ竜とも呼ばれる。北海道むかわ町で見つかった恐竜化石カムイサウルスも同じ仲間だ。今回の発見が重要視されるのは、ヤマトサウルスがハドロサウルス科の原始的な種であり、白亜紀の中頃(約9500万年前)に出現したハドロサウルス科の進化の過程が明らかになるとみられるためだ。
白亜紀後期の進化種と比べ、肩の筋肉が未発達だった。原始的な個体から進化的な個体に移行する過程で、二足歩行から四足歩行に変遷したことを示唆しているという。つまり、歩行様式の変化が行動範囲の拡大につながり、種としての多様化や繁栄をもたらした可能性があるのだ。
この可能性を今後分析していく上で日本を含む東アジア沿岸部が重要になってくる。約9500万年前の原始的な種の可能性があるヤマトサウルスの化石が7200万年前の地層から発見された。これは日本を含む東アジア沿岸部が、「レフュジア」と呼ばれる昔のままの種が残存できた地域だったことを示唆している。ヤマトサウルスは2千万~3千万年の間、絶滅せずに進化種と共存していたということになる。
同館の久保田克博研究員(古脊椎動物学)は「日本の恐竜類の重要性を再確認できた。日本独自の視点から恐竜類の進化を解き明かしていく」と語る。
眠っている標本の重要性
岐阜県高山市荘川町の手取(てとり)層群で見つかったのは、獣脚類(二足歩行の肉食恐竜)トロオドン科の卵殻化石5点。筑波大などの研究チームが今年7月に発表した。約1億3千万年前の白亜紀前期の地層で見つかったことから、日本最古の恐竜の卵殻化石とみられる。
トロオドン科は鳥類に近い小・中型の羽毛恐竜で、二足歩行し、後ろ脚に大きな鍵爪を持つ。白亜紀前期のアジアで出現し、北半球で繁栄したと考えられている。5点の卵殻化石は、最大1・7センチ、厚さ約0・5ミリ。断面を顕微鏡で観察した結果、トロオドン科や同科に近縁の恐竜の卵に特徴的な模様が見られた。化石の形状から親恐竜は全長1・5メートル程度と推定されるという。
手取層群は岐阜、福井、石川各県などに分布する中生代ジュラ紀中期~白亜紀前期(約1億6700万~1億1千万年前)にかけての地層。多くの種類の恐竜化石が発掘される層群として世界的に知られる。
これまでトロオドン科の骨化石は見つかっておらず、卵殻化石の分析を行った筑波大大学院1年の植松里菜さん(22)は「手取層群において未知の恐竜の存在の可能性が示された意義は大きい」と話す。
卵殻化石は地元の化石愛好家らが平成11年以降に発見。当時は恐竜化石と特定できず、約20年間も地元の役場で保管されているのを岐阜県博物館主任学芸員の高津翔平さん(32)が見つけた。高津さんは「まとまった化石群ではなく、見落としがちな小さな化石から非常に重要な古生物学的な意義を示せた。眠っている標本を探し出す重要性を再確認できた」と振り返る。
豊かな生物系
岩手県久慈市の久慈琥珀博物館などは今年7月、久慈層群玉川層(約9000万年前)から、白亜紀後期の4種類の獣脚類の歯化石を見つけたと発表した。同一の地域・層から、さまざまな獣脚類の化石が発見されるのは国内初だという。
ティラノサウルス類、2種類のリカルドエステシア、パロニコドンの歯化石で、北米にいたとみられるリカルドエステシアやパロニコドンは日本で初めての発見だ。食物連鎖の頂点にある獣脚類が多様に存在したとみられ、当時の日本が豊かな生態系にあったことを示唆しているという。
久慈市ではこれまでに計30種類、約2200点の脊椎動物化石が見つかっている。
筆者:有年由貴子(産経新聞)
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2021年8月15日産経ニュース【クローズアップ科学】を転載しています
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