バイデン米大統領とテレビ会議形式で会談する岸田首相
=1月21日夜、首相官邸(内閣広報室提供)
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岸田文雄首相が1月21日のバイデン米大統領とのテレビ会議形式の会談で重視した問題の1つが北朝鮮による拉致問題だった。バイデン氏も首相の意向を汲み取り、「問題の即時解決」を目指す日本政府の姿勢を支持した。両首脳は互いを「ジョー」「フミオ」とファーストネームで呼び合って互いの経済政策で意気投合し、会談は予定を20分超える80分に及んだ。
「フミオ、ビューティフルな青いバッジをつけているね」
バイデン氏との初の本格的な対話となる今回の会談。拉致問題の解決に協力を求められると、バイデン氏は首相が胸元に着けた拉致被害者の救出を願う「ブルーリボン」のバッジに触れた上で「私は着けてはいないけれど心は一緒だ。拉致の問題では日本の対応を強く支持する」と語った。
バイデン政権はこれまで、閣僚が日本側との会談でブルーリボンを身に着けるなど拉致問題を重視する姿勢を見せてきた。今回の会談でも、直前に在日米国大使館の1等書記官が新潟県を訪れ、蓮池薫さん夫妻と横田めぐみさんが拉致された現場を視察するなど拉致問題への関心を示した。首相は周辺に「改めてバイデン氏に問題意識を持ってもらった」と成果を語る。
両首脳は互いの経済政策についても歩調を合わせ、意気投合した。
「私の選挙公約ではないかと思った」
首相が格差是正などを目指す自身の経済政策「新しい資本主義」について説明すると、バイデン氏は冗談交じりに応じた。会談の雰囲気は一気に和らぎ、経済政策の話題に20分が費やされた。
経済政策における中間層の重視は、首相とバイデン氏に共通した姿勢だ。会談でバイデン氏は「中間層と低所得層をしっかり押し上げていかなくてはならない」と自身の考えを説明し、次回の首脳会談では持続可能な経済社会の実現に向けた議論を深めることで一致した。
首相は会談後、バイデン氏が「今後も膝をつき合わせて、政治家同士として密接に意見交換を続けたい」と言及したことを自ら紹介しており、個人的な関係構築に手応えを感じているようだ。首相側近も「150点だ」と自賛する。
ただ、中間層対策で2人の話が盛り上がったとすれば、国内問題に苦しむバイデン氏の事情を反映しているともいえる。中国や北朝鮮の脅威が深刻の度を増す一方で、バイデン政権はウクライナ情勢の対処に忙殺されてもいる。首相は今回構築した信頼関係をもとに、バイデン氏の関心をインド太平洋地域の戦略問題に引き寄せる役割も求められる。
筆者:永原慎吾、長嶋雅子(産経新聞)