日産再び「Z」を復活の象徴に 日系メーカーで相次ぐスポーツカー投入
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世界的に電気自動車(EV)シフトが進むなか、日系自動車メーカーが高性能エンジンを搭載したスポーツカーを相次いで投入する。日産自動車は、半世紀以上の歴史を持つ「Z」(日本名・フェアレディZ)の新型車を市場規模の大きい米国で2022年春に発売。トヨタ自動車はSUBARU(スバル)と共同開発した新型「GR86(ハチロク)」を今年秋頃に投入する。運転の楽しさや走行性能といった車本来の魅力を追求し、ブランドイメージの向上につなげたい考えだ。
「Zは今も昔も最高のスポーツカーだ」。日産のアシュワニ・グプタ最高執行責任者(COO)は8月、米ニューヨークで開いた新型Zのオンライン発表会で誇らしげに語った。
08年以来14年ぶりに全面改良し、7代目となる新型Zは、1969年に発売された初代に近いデザインを採用。ボンネットが長い「ロングノーズ」を踏襲している。
ガソリン車のみで、排気量3000cc、400馬力のターボエンジンを搭載。9速オートマチック車のほか、走りにこだわる顧客向けに6速マニュアル車も用意した。価格は4万ドル(約438万円)前後から。日本でも発売される見通しで、日産は今冬に詳細を発表する。
Zは累計販売台数180万台を超え、日産を象徴する車だ。業績不振に陥った00年にいったん生産中止になったが、V字回復を達成したカルロス・ゴーン被告が社長だった02年に5代目を発売し、経営危機からの復活を印象づけた。
しかし、ゴーン被告が主導した拡大路線の失敗で日産の業績は再び落ち込み、ブランドイメージも毀損(きそん)した。新型車の相次ぐ投入で業績回復を目指す日産は、今回もZを復活のシンボルと位置付ける。
19年に相互出資に踏み切り、協力関係を深めるトヨタとスバルは、ガソリン車に限定した新型のスポーツカーを共同開発。スバルはBRZの車名で7月末に発売(308万円から)し、トヨタもGR86(ハチロク)の車名で今年秋頃に発売する。
エンジンや車台は共通化したが、乗り味の違いは鮮明だ。BRZが加速が滑らかで、カーブも安定して走行するのに対し、ハチロクはアクセルやステアリングの応答性が高く、迫力のある走りが楽しめる。スバルの担当者は「お互いに譲れない所は意見を出し合った」と明かす。
若年層のクルマ離れや娯楽の多様化などを背景に国内の乗用車市場は縮小傾向が続くが、トヨタの担当者は「若年層や、大人になっても車に乗りたい中高年層など幅広いユーザーがターゲットだ」と語る。
ただ、世界的に加速する脱炭素への対応は、スポーツカーでも大きな課題だ。
40年に世界で販売する新車の全てをEV、燃料電池車(FCV)とする目標を掲げるホンダは「NSX」の生産を22年12月に終える。将来的にはEVのスポーツカーを発売する計画だ。
スポーツカーで脱エンジンの動きが広がっても、ドライバーを興奮させる走りを実現できるか。各メーカーの技術力が試されることになりそうだ。
宇野貴文(産経新聞経済部)
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2021年10月22日産経ニュース【経済インサイド】を転載しています
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