言葉遊びは終わりだ
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実態とかけ離れた言葉遊びをいつまで続ける気なのか。4月17日の小欄で、立憲民主党の枝野幸男代表が台湾を国と呼んだところ、朝日新聞が「国際感覚が問われそうだ」とかみついたことを紹介した。すると今度は、同じく台湾を国と表現した菅義偉首相の答弁を加藤勝信官房長官が事実上、修正した。
加藤氏は、香港のテレビ局記者に日本の立場を尋ねられて答えた。「1972(昭和47)年の日中共同声明にある通りで、非政府間の実務関係として維持する基本的立場には何ら変更ない」。政府はこれまで「一つの中国」の原則に従い、外交関係がない台湾は「国」ではなく「地域」と呼称してきた。
とはいえ声明は、台湾を領土の不可分の一部だとする中国の立場を「十分理解し、尊重し」と定めているにすぎない。2400万人近い人口を有し、民主主義体制下で運営されている台湾を、国ではないと言い張る方が無理があろう。
正式な外交関係がないといえば、北朝鮮もそうである。だが、こちらは国会でもマスコミでも、当たり前のように地域ではなく国として扱われてきた。河野太郎行政改革担当相も、外相時の平成30年5月の参院外交防衛委員会で「北朝鮮という国」と述べたが、誰も問題視していない。
「深い友情に感謝します」。台湾の蔡英文総統は5月28日、日本政府が英アストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチンを台湾に提供する検討に入ると、ツイッターに丁寧な謝辞を記した。日本から幾度も食料や医薬品など人道支援を受けながら、どこ吹く風の北朝鮮とどちらが国にふさわしいか。
まして現在進行形のジェノサイド(民族大量虐殺)で世界の非難を集める中国に忖度(そんたく)しても、得るものより失うものが大きい。
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2021年6月12日付産経新聞【産経抄】を転載しています
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