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日米激戦のガダルカナル島、米中新冷戦の最前線に

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南太平洋のガダルカナル島は、米国とオーストラリアを結ぶシーレーン(海上交通路)に位置する要衝だ。第二次世界大戦では、連合国の米豪を分断するため旧日本軍が同島に航空基地を建設し、ここでの攻防によって双方から計2万人以上の死者を出す激戦地となった。

 

80年後のいま、海洋進出を続ける中国が、この地に再び〝くさび〟を打ち込み、南太平洋地域を揺るがしている。

 

2019年10月、北京を訪問したソロモン諸島のソガバレ首相(右)と中国の李克強首相(AP)

 

中国、要衝のソロモン諸島に「くさび」

 

震源となったのは、ガダルカナル島に首都を置くソロモン諸島と中国が署名した安全保障協定だ。両国は協定の詳細を明らかにしていないが、3月にSNSに流出した草案とされる文書は、周辺国にとって衝撃的な内容だった。ソロモン諸島が主権を中国に譲り渡すかのような権限を認めていたからだ。

 

流出文書によると①中国はその必要に応じて、ソロモン諸島に艦船を寄港させ、補給を行うことができる。中国側の人員や事業の安全を守るために武力を行使できる②ソロモン諸島は、社会秩序の維持や人命・財産の保護などのために、中国側に警察や武装警察、軍人の派遣を要請できる③ソロモン諸島は中国側の任務のために情報・補給上の支援を行い、職員の裁判権免除を認める-などと規定している。

 

 

豪州に衝撃走る

 

中国側の〝奇襲〟に最も衝撃を受けたのは、太平洋諸国を自国の「裏庭」と考えてきた豪州だろう。ソロモン諸島は豪州と同じく、英女王エリザベス2世を元首に戴く英連邦王国の一国だ。豪州は旧宗主国である英国の「番頭」(中国メディア)として、また地域の盟主として、ソロモン諸島に多額の援助を行い、国家運営を支えてきた。中国より先に安保協定を結び、軍隊を持たない同国の秩序維持もしばしば担ってきた。ソロモン諸島はその豪州以上の権限を中国側に与えようとしているかに見える。

 

安全保障協定について米外交誌ディプロマットは、南太平洋地域の「形勢を一変させる」展開だと指摘。署名された協定は「流出した草案に非常に近い」とも分析している。

 

中国とソロモン諸島はいずれも、中国がソロモン諸島に軍事拠点を常設することはないと主張する。しかしオーストラリア戦略政策研究所(ASPI)は、ソロモン諸島の議会が中国との安保協定を承認して協定が批准されれば「ゆくゆくは中国が太平洋島嶼(とうしょ)国に軍事プレゼンスを確立することにつながる」と警鐘を鳴らす。

 

豪州は2021年、米英との安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」を通じた原子力潜水艦導入を決定し、東海岸に原潜基地を建設する計画だ。中国はソロモン諸島という「豪州の玄関口」に設けた軍事拠点を通じて、米英豪の原潜を監視しようとするだろうとASPIは警告している。

 

2021年7月2日、オンラインで開催された第9回太平洋・島サミット(PALM9)

 

島嶼国の思惑 背景に

 

太平洋諸島学会会長の小林泉・大阪学院大教授は中国とソロモン諸島との安全保障協定署名について「米豪の常識では、あり得ないことが起きてしまった」と指摘する一方、その原因は豪州や米国などの「失策」にあると断じる。

 

「豪州と南太平洋の島嶼国は『親子の関係』と考えればいい。島嶼国はすでに独立しているのに、いつまでも子供扱いして高圧的な態度で接する豪州への反発が広がっていた。援助の選択肢を広げて支配意識を排除したいという島嶼国の思惑が、今回の問題の背景にある」

 

豪州の驕(おご)りと、援助国を競合させる島嶼国の強かさ。さらにソロモン諸島が抱える民族的な対立も、中国に付けこむ隙を与えた。

 

ソロモン諸島は1978年、千近くの島や環礁からなる国家として英国から独立した。現在の人口は70万人余り。しかし「各島が(国家という)運命共同体になる必然性は何もなかった」(小林教授)ことが、民族紛争の火種となった。

 

ガダルカナル島に首都ホニアラが置かれると、向かいにあるマライタ島からマライタ人が多く移住してきた。島内において最も精力的で勤勉とされるマライタ人は政財界の要職を占めるようになり、ガダルカナル人との対立が先鋭化する。

 

この民族対立は、南太平洋で外交戦を繰り広げる中国、台湾のいずれを支持するかという政治的立場の分断も生んだ。もともと外交関係があった台湾の支援プロジェクトは、マライタ島に集中する傾向があり、台湾とマライタ人とのつながりは強かった。そうした中で19年に4度目の就任を果たしたソガバレ首相は同年9月に台湾と断交し、中国と国交を樹立。21年11月には中国と関係を強めるソガバレ政権の退陣を求めたマライタ人らのデモが暴徒化し、中華街の商店などが破壊された。

 

ソロモン諸島の中国大使館(AP)

 

今後、南太平洋における米中の覇権争いはどのような展開をみせるのか。バイデン米政権は4月、国家安全保障会議(NSC)のキャンベル・インド太平洋調整官らをソロモン諸島に派遣し、中国軍が常駐することになれば「対抗措置」をとるとソガバレ首相に警告した。議会側にも安保協定を承認しないようクギを刺した可能性がある。

 

米国は1993年に閉鎖したソロモン諸島の大使館を近く再開する方針だ。小林教授は「米国ではトランプ政権期から、(中国の進出をにらんで)太平洋地域の対応を豪州まかせにしないという動きが出ていた。ロシアによるウクライナ侵攻の影響がなければ、南太平洋地域における主導権は豪州から米国に移っていくだろう」と予測する。

 

一方、中国紙・環球時報(電子版)は、ソロモン諸島との安全保障協定をめぐる米側の対応について「強烈なヒステリー反応」だと批判。米国が南太平洋地域を通じて「アジア太平洋戦略」を推進し、南シナ海と台湾問題における対中圧力を強めようとしていると主張した。こうした米側の「対中封じ込め」に対する中国の危機感が、南太平洋での攻勢につながっているともいえそうだ。

 

筆者:西見由章(産経新聞前中国総局長)

 

 

2022年4月27日産経ニュース【中国的核心】を転載しています

 

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