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野球やサッカーで重要な「複数対象追跡」能力のトレーニング効果検討 西日本工業大など

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あらゆるスポーツで使われる「複数対象追跡」スキル
※画像はイメージです

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さまざまなスポーツ競技で無意識的に使われている「複数の動く対象を追跡する能力」。これは、トレーニングによって強化可能ということが、西日本工業大学工学部の古門良亮助教らの研究で分かった。野球やサッカーなどの定番球技でも頻繁に使われる能力というだけあって、体力や腕力、技術だけでないトレーニングの新機軸としての活用も期待される。研究論文はデジタル領域の学術論文を掲載する電子ジャーナル「Journal of Digital Life」(ジャーナル・オブ・デジタル・ライフ)で公開されている。

 

 

意外と知られてない「複数対象追跡スキル」

 

野球、サッカー、バスケットボール。プロチーム同士の公式試合が日常的にテレビやネットで生中継されるこれらの競技は、言うまでもなく世界的に人気のスポーツ競技だ。学生の部活動や体育祭でも定番と言え、体育の授業でも実践されるため、日本人にも馴染みが深い。幼少期の遊びを含めると、多くの人が一度は経験したことがあるのではないだろうか。

 

実は、これらのスポーツのパフォーマンスには、私たちが無意識にも使っている“ある能力”が深く関わっているという。スポーツのパフォーマンスに影響する力というと、体力や腕力、走力、跳躍力などが挙げられるが、古門助教らが着目したのはそのいずれでもない。

 

その名も、複数対象追跡(MOT=Multiple Object Tracking)スキルだ。

 

例えば、野球のランナーは試合の状況を迅速に判断し、次のプレーを予測して行動することが求められるという。刻々と変化する状況に応じて視野内の相手・味方・ボールの位置などに注視する必要があるが、その際に発揮するのがこの「複数対象追跡スキル」だ。野球のランナー以外にも、サッカーやバスケのパス精度にも影響するものだとしている。

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古門助教らの論文では、複数の対象を追跡しているときの視線の動かし方に注目。「視野に存在する多くの視覚情報の中から、特定の情報を選択し、対象を正確に捉える過程」と定義される「視覚探索」の方法から、追跡している時の目の動きをパターン化することができれば、効率的なトレーニング方法をスポーツ現場に提供できる可能性があると考えた。

 

そのため研究は、複数対象追跡スキルのトレーニング効果の検討と、スキルが向上した要因を「視線の動きの変化」から明らかにすることを目的に進められた。

 

 

大学の野球部員を対象にトレーニング効果を検証

 

実験は「複数対象追跡能力」のトレーニング経験がない視力1.0以上の、ある大学の野球部員29人を対象に行われた。チームを19人のAチームと、10人のBチームに分け、はじめにそれぞれの能力を測定。その後、Aチームのみ複数対象追跡のトレーニングを週2回、3週間実施した。

 

トレーニング内容はこうだ。画面の立方体の空間に配置された8個の黄色い球のうち、ランダムに4個が1秒間赤色に点灯する。全ての球が黄色に戻った後、8.7秒間画面内をランダムに壁や球体同士がぶつかり合って動き、静止して球体に1〜8の番号が振られる。その中で、最初に赤色になった球を選ぶというもの。なお、4つ全て当てることができた場合は次の球体の移動速度が加速し、1つでもミスをした場合は減速するように調整した。

 

8個の球体を使ったトレーニングの流れ(出典:「複数対象追跡スキルのトレーニング効果および視覚探索方略の検討」(古門良亮、秋山大輔、佐久間智央、神力亮太、萩原悟一、磯貝浩久著、一般社団法人日本人間工学会刊『人間工学』2019年55巻2号 p.33-39より))

 

 

実験では、これを20回で1セットと数え、トレーニング実施日にはこれを2セット行うようにした。そして3週間が経過した後、再びAB両チームで能力測定を行い、能力に変化があるのかを観察。能力測定にはナックイメージテクノロジー社製の眼球運動測定装置「EMR-9」を用いて、目の動きの運動データを取得した上で分析を行った。

 

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実験の結果、トレーニングを実施したAチームの追跡する能力は、トレーニング実施前と比べて実施後は平均1.42倍と有意にスコアを伸ばす結果となった。一方、視線の移動距離や停留回数・時間などを分析した結果、トレーニングによって視覚探索の方法が変化することはなかった。

 

トレーニングしたT群は、しなかったC群よりも能力が平均1.42倍に向上した(出典:「複数対象追跡スキルのトレーニング効果および視覚探索方略の検討」(古門良亮、秋山大輔、佐久間智央、神力亮太、萩原悟一、磯貝浩久著、一般社団法人日本人間工学会刊『人間工学』2019年55巻2号 p.33-39より))

 

実用化するには課題も

 

すでに複数対象追跡能力を向上させることは、バスケットボールやサッカーのパフォーマンス向上へつながることが明らかにされており、プロスポーツ選手のキャッチやパス、シュートにおけるヒューマンエラーの減少に有効とされている。しかし一方で、現状では具体的にどのように野球のパフォーマンスに有用なのかは示されていないため「スキルの測定前後にパフォーマンス変数を追加し、その影響を検討する必要がある」という。

 

論文では、トレーニングによって複数対象追跡スキルが向上した一方で、視覚探索方法については変化が見られなかったことから「複数対象追跡スキルは視覚探索方略と関連しない可能性が高い」と結論付け、今後は「トレーニング効果が実際の野球パフォーマンスへ与える影響を明らかにし、現場での指導方法を構築していく必要がある」とした。

 

研究は古門助教のほか、九州産業大学人間科学部の磯貝浩久教授、秋山大輔准教授、萩原悟一准教授、日本大学工学部の佐久間智央専任講師、常葉大学健康プロデュース学部の神力亮太助教と共同で進められた。

 

論文の詳細はこちらから

 

◆参考文献:「複数対象追跡スキルのトレーニング効果および視覚探索方略の検討」(古門良亮、秋山大輔、佐久間智央、神力亮太、萩原悟一、磯貝浩久著、一般社団法人日本人間工学会刊『人間工学』2019年55巻2号 p.33-39より)

 

筆者:齋藤顕(SankeiBiz編集部記者)

 

SankeiBizの記事を転載しています

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