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日本ラグビーの進化後押ししたトンガサムライ

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前半、トライを決める田村優
=秩父宮ラグビー場(撮影・福島範和)

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互いの絆を確かめるような80分が終わった。6月11日、東京で行われた「ジャパンラグビーチャリティーマッチ2022」。トンガの海底火山爆発による被災者を支援する試合は、次代の日本代表エマージングブロッサムズが在日トンガ人で編成されたトンガサムライⅩⅤを31-12で下したが、8055人の観衆はサイドのない声援を贈り続けた。「トンガが1月15日に噴火や津波が起きた時から、なんとかしたいという考えがあった。ラグビー選手の力で自分たちの国を応援したかった。日本の皆さん、トンガのために、ありがとうございました」

 

試合後、記念撮影に臨む両チームの選手たち =秩父宮ラグビー場(撮影・福島範和)

 

よどみのない日本語でスタンドに声をかけたのは、トンガサムライのシナリ・ラトゥ・ヘッドコーチ。トンガ王国から1985年に日本の大東文化大に留学して、三洋電機、日本代表で不動のNO8として活躍した両国ラグビーのレジェンドだ。いまは日本人として日本に定住するラトゥ氏だが、祖国の被災を知った直後からチャリティー活動に動き出し、日本ラグビー協会にも相談に駆け付けた。「国内リーグが終わり、代表戦が始まる期間。最初は実現は難しいと感じた。でも、多くの方が理解し、開催できた試合。もう感謝の思いしかなかった」

 

そんな思いはチームジャージーにも描かれた。平和の象徴である鳩や日本の侍が被った兜がデザインされたエンブレムには、チーム名と共に“KANSYA”と書かれている。Appreciationを意味する日本語だが、伝えたかったのは今回の被災への支援だけではない。ラグビーを通じた40年を超える両国の友情への感謝の思いだった。

 

試合終了後、スタンドに手を振るトンガ・サムライ・フィフティーン。中央はレメキ・ロマノラヴァ =秩父宮ラグビー場(撮影・佐藤徳昭)

 

日本とトンガの交流に、ラグビー以前に大きな役割を果たしたのがそろばんだった。トンガ国王トゥポウ4世が日本の発展の礎となったそろばんに注目して留学制度が始まった。ラグビーが国技のような同国留学生を受け入れた大東文化大の担当教授がラグビー部長だったために、1981年に初の留学生となったのがノフォムリ・タウモエフェフォラウ。日本代表で1987年の第1回W杯にも出場した名WTBだ。

 

試合終了後、健闘をたたえ合う両チームの選手ら =秩父宮ラグビー場(撮影・佐藤徳昭)

 

トンガサムライ団長の同氏とともに第1回W杯で中心選手として活躍したラトゥHCは、「ノフォムリさんが留学した時は全てが初めて。苦労しながら日本に残ってくれたことで、続く私たちの道を切り拓いてくれた」と語る。トンガ出身の日本代表は通算27人、キャップ数は328。この数字を見ても、どれだけ南太平洋の島のラグビー選手が、日本ラグビーの進化を後押ししてきたかが伺い知れる。

 

試合前に披露されたトンガ・サムライ・フィフティーンの「シピタウ」 =秩父宮ラグビー場(撮影・福島範和)

 

同時にラトゥHCはこう言葉に力を込めた。「今日、ここにいる選手たちの多くは、高校、大学から日本に来ている。日本で育てられた選手なのです」。ノフォムリ氏らの時代から、同胞と共に多くの日本人がトンガ人留学生、選手を支え、共に戦ってきたことこそが、2つの国のかけがえのない絆になっている。KANSYAの文字は長きにわたる友情への思いを込めて左胸に書き込まれた。

 

後半、トライを決めるテビタ・タタフ =秩父宮ラグビー場(撮影・佐藤徳昭)

 

エンブレムをデザインしたフェレテイリキ・マウも同じ大東文化大出身。まだ世界では力不足だった2000年代の日本代表で、パワーハウスとしてチームを後押しした。神経系のけがで引退を余儀なくされた時には、所属チームへの不信感もあったが、今回のエンブレム、そして同じく自ら考案したシピタウ(トンガ代表がテストマッチ前に行うウォークライの儀式)には、日本への、日本の仲間への感謝の思いを込めた。

 

会場周辺で配布されたサンケイスポーツ(サンスポ)の号外を手にする観客 =秩父宮ラグビー場(撮影・佐藤徳昭)

 

日本側でも、2019年W杯でベースキャンプ地としてトンガ代表を受け入れた高知県が、今回も合宿地を用意。ミズノは無償でチームジャージー、ウェアを提供して南海の侍を支えた。両国の様々な選手、関係者の思いが1つになって実現したチャリティーマッチ。金額以上の重みのある募金が太平洋を渡って届けられる。

 

筆者:吉田宏(ラグビージャーナリスト)

 

 

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