【主張】首相が原発方針 東日本の逼迫解消されぬ
関西電力高浜原発の左から3号機、4号機
=福井県高浜町(本社ヘリから、鳥越瑞絵撮影)
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冬の電力不足に対する懸念が強まる中で、岸田文雄首相が最大9基の原発の稼働を萩生田光一経済産業相に指示した。
そのうえで首相は「政府の責任であらゆる方策を講じ、将来にわたって電力の安定供給が確保されるように全力で取り組む」と表明した。
ようやく岸田政権が電力需給の逼迫(ひっぱく)に対応した具体策を示したことは歓迎したい。
ただ、首相が表明した最大9基の原発は、関西電力と九州電力、四国電力の原発が対象で、すでに原子力規制委員会の安全審査に合格し、再稼働の実績があるものに限られる。需給逼迫が頻発している東日本における原発の新規再稼働は見込んでいない。
これで本当に深刻な電力不足の打開につながるかは不透明だ。首相は以前から「原発を最大限活用する」と強調している。それならば、東日本大震災後、一度も運転を再開していない東京電力や東北電力などの原発再稼働を自ら主導し、東日本の電力需給の逼迫解消に正面から取り組むべきだ。
首相は冬に向け最大9基の原発に加え、10基の火力発電所も追加稼働を進める方針を表明した。9基の原発がすべて稼働すれば、国内の電力消費の約1割を賄うことができるというが、これらは規制委による安全審査に合格した西日本の原発が対象だ。
3月の需給逼迫警報や6月の需給逼迫注意報は、すべて首都圏を含む東日本で発令され、同地域の電力不足は深刻だ。安定供給に最低3%は必要とされる予備率についても、来年1~2月に東電、東北電管内では1・5%にとどまる厳しい状況が見込まれている。
西日本で発電した電力を東日本に融通できる量は、周波数変換や送電網の容量もあって限定的だ。原発を最大限活用し、電力の安定供給を確保するためには、東日本における原発の新規再稼働が何より欠かせない。
また、首相は規制委による原発の安全審査が長期化している現状を問題視し、「規制委の安全審査の効率化が必要」とも強調している。早期再稼働に向け、審査の迅速化や効率化を促すべきだ。首相の指導力が問われている。
政府は休止中の火力発電所も再稼働させて供給力を増強する。老朽化した発電所は故障リスクも高い。安定電源の確保に向けて投資を継続できる仕組みも必要だ。
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2022年7月16日付産経新聞【主張】を転載しています
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