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【主張】羽生選手の引退 新たな理想像が楽しみに

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千葉市の幕張メッセで開かれたアイスショー
「ファンタジー・オン・アイス」に出演した羽生結弦
5月27日、=幕張イベントホール(撮影・福島範和)

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フィギュアスケート男子の羽生結弦が競技生活からの引退を表明した。ニュースは中国やロシアでも速報された。

 

これほど世界で愛されたスケーターはいなかったろう。ソチ、平昌の冬季五輪を連覇した実績はもちろん、誰よりも美しく幻想的に舞いながら、前人未到の大技にも挑み続けた。その飽くなき挑戦が各国選手の尊敬を集めてきた。

 

その意味では、最後の大舞台となった2月の北京冬季五輪で誰も成功したことがないクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)に挑戦して転倒したのは、彼の競技生活の最後にふさわしいシーンだったといえるかもしれない。

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半面、羽生の競技人生はトラブルと故障の連続だった。東日本大震災で被災し、全てのジャンプで着氷する右足首は靭帯(じんたい)損傷などの大けがを繰り返した。万全の状態で臨んだ大会はないはずだが、五輪以外でも世界選手権やグランプリファイナルで結果を残し、観衆を魅了し続けた。

 

もう、ここらで少し休んでもいいのではないか。長年の労に、心からの拍手を送りたい。

 

平昌冬季五輪2018フィギュアスケート・男子フリー羽生結弦の演技。2大会連続で金メダルを獲得した =2018年2月17日、韓国・江陵アイスアリーナ(代表撮影)

 

羽生はファンタジーとリアルのはざまに生きたヒーローである。それはリンク上だけにとどまらなかった。五輪連覇達成後に臨んだ日本記者クラブの会見では、リンクに大量に投げ込まれるプーさんのぬいぐるみの行方を問われて「森に帰りました」と会場の笑いを誘い、こう続けた。

 

「リアルに言えば大金を払って現地まで来てくださり、高いチケットを入手していただいている。そうしたお金が飛んでいる。経済が回っているなら、それで十分です」。現実的で冷徹な面も持つ稀有なアスリートでもあった。

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フィギュアスケート男子の羽生結弦の記者会見を伝える街頭テレビ=7月19日午後、東京・有楽町(共同)

 

今後は競技会に出場せず、他の選手と得点を競うことはしない。その一方で、プロのアスリートとしてスケートの魅力を伝えるために、過去の自分と戦い続けるのだという。北京で転倒した4回転半ジャンプにも「より一層、取り組んでいきたい」と明言した。

 

どうやら自身には、ゆっくりと休む気持ちはないらしい。

 

ただ、五輪や世界選手権といったスケジュールに縛られることはなく、得点のためではない、理想の追求だけに滑り続けるのだという。これほど希望に満ちあふれた引退会見は記憶にない。新たな羽生結弦の姿を楽しみにしよう。

 

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2022年7月20日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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