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「廃棄食材からうまいビールを」 パンの耳やコーヒー豆 無駄なく再生

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パンの耳から「蔵前ホワイト」(右)、コーヒー豆から「蔵前ブラック」。
背後の仕込み釜で醸される=東京都墨田区(重松明子撮影)

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捨てられていたモノに新たな価値を加え、アップグレードして別の製品に循環させる取り組み。「アップサイクル」がアパレルなどで盛んだが、今回は東京都台東区蔵前のビールに注目したい。サンドイッチ店が処分に困っていたパンの耳を白ビールに、コーヒー店で捨てられていたテスト焙煎の豆を黒ビールに…。品質・安全上問題ないのに廃棄せざるをえなかった〝もったいない〟食材が使われた一杯は、素材の風味が生きて格別だ。モノのサイクルだけではない。下町人情の輪も循環させている。

 

 

悩みの事業ゴミがゼロに

 

「これまで毎月3千円ほどかけて事業ゴミに出していたパンの耳が、今は廃棄ゼロ。それも、こんなにおいしいビールになるなんてびっくり、うれしい」

 

ボリュームのあるカツやフルーツのサンドイッチが人気の「マルセリーノ モリ」で、店主の福地和子さん(58)が声を弾ませた。父の代から、子供もお年寄りも食べやすいようにとパンの耳を落としてきたが、引き取り先のパン粉業者が廃業して、困った。欲しいお客に無料であげても、週あたり20キロ前後も出るため追いつかず、ゴミとなる。

 

「心の負担が重く、餌にできないかと動物園に電話したこともあります」

 

そんな折の昨年6月。 ママ友でコーヒー焙煎店「縁の木」を営む白羽玲子さん(50)が、「ビールになるかも」と声をかけた。その頃、白羽さんが主宰する町内の資源循環活動「KURAMAEモデル」とアサヒビールが連携。コーヒーの廃棄豆を活用したビール開発が、隅田川対岸のクラフトビール醸造所「TOKYO隅田川ブルーイング」(墨田区)で進められていたのだ。

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サンドイッチ店からパンの耳を回収。蔵前ビールの原料になる=東京都台東区(重松明子撮影)

 

コーヒーが香る「蔵前ブラック」が7月、パンの香ばしさと甘さがやさしい「蔵前ホワイト」が10月にそれぞれ商品化。醸造所併設レストランなどで飲めて、新名物になっている。

 

 

きっかけは昨年3月。アップサイクルに取り組む、アサヒビール社員の古原徹さん(37)のツイッターに白羽さんが共感メッセージを送ったことだ。

 

「下町つながりで連携しましょう」とトントン拍子に話が進んだ。現在、アップサイクル活動には町内のカフェなど13店舗が参加。ビールに活用しきれなかったパンの耳やケーキに使った卵の殻なども集め、コンポストで無駄なく堆肥化している。

 

また、地元の福祉作業所に通う障害者が回収に参加しているのも特徴。パンの耳を作業所に持ち帰り、オーブンで焼いてビール原料に加工する。これをビール会社側が買い取ることで、彼らに報酬が生まれる。

 

取材日のサンドイッチ店では、「(パンの耳)重いけど大丈夫?」「力持ちだから平気」という会話も。

 

店主の福地さんは語る。「モノの循環だけでなく、人の輪が広がってゆくのがうれしい。サンドイッチを買ってくれるお客さんも、川の向こうまで行って『ビール飲んできました』『おいしかった』と声をかけてくれる。SDGs(持続可能な開発目標)って堅苦しいものでなく、楽しいから続けられるんですね」

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一方、アサヒグループ側は今年1月、環境保護や社会貢献活動を展開する新会社、アサヒユウアス(東京都墨田区)を設立し、アップサイクルビール事業が拡大中だ。各地で個性的なビールが誕生している。

 

4月には埼玉県狭山市の茶業者と連携してケバ茶(茎の皮)を使った「狭山グリーン」、5月には千葉県山武市の観光農園で余ったイチゴを発酵させた「さんむレッド」を発売し、今後も増える計画だ。

 

廃棄食材だからコストも安くなる? そんな問いに、「特別な手間がかかり、コスト削減にはなりません」と、茂田(もだ)一郎ユニットリーダー(49)。その上で、「地域の方と協力して困りごとや無駄を減らす。ビールを通じてそんな貢献をしてゆきたい」。

 

私も飲んで貢献します!

 

筆者:重松明子(産経新聞)

 

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2022年5月30日付産経新聞【近ごろ都に流行るもの】を転載しています

 

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