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消えた5億トンのプラごみの行方 海洋流出は氷山の一角

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砂浜でマイクロプラスチックの採取調査を体験する子供たち
=2021年11月23日、香川県三豊市の粟島(撮影・和田基宏)

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現代人の生活に欠かせない存在であるプラスチック。使用後にきちんと処理されずに海に流出してしまう「海洋プラスチックごみ」が、世界的な課題となっている。九州大などの研究チームが、コンピューターシミュレーションを使って約60年間にわたって環境中に漏れたプラごみの行方を追ったところ、驚くような結果が出た。行方が分かったのは5%足らずで、ほとんどは行方不明だというのだ。いったいどこに消えたのか。海洋プラごみ削減に影響はないのか。

 

 

消えたプラごみの謎

 

環境中に漏れ出てしまったプラスチックは、分解せずに数百年から千年規模で自然界に残るとされる。世界でプラスチック製品が普及した1950~60年代以降、世界各地にプラごみがたまり続けている。プラスチックは紫外線で劣化したり、波にもまれたりして細かく砕けて微細片「マイクロプラスチック」となる。海洋生物が体内に取り込んでしまうなど、環境や生態系への影響が懸念されている。

 

これまでの研究で、陸から海に流出するプラごみは、年間200万トン程度(2010年時点)と推計されている。多いものでは約400万トンとする推計もある。その一方、海で実際に観測されるごみは25万トンほどに過ぎない。推計と観測に大きなギャップがあり、海洋プラごみのほとんどの行方が分からない「ミッシング・プラスチック」と呼ばれる大きな謎となっている。

 

九州大の磯辺篤彦教授(海洋物理学)らの研究チームは、この謎を解明しようとコンピューターシミュレーションを用いて、60年代から現在までの約60年間に海に漏れ出たプラごみの行方を重量ベースで明らかにした。

 

チームはまず、海洋プラスチックごみの総量を求めた。海洋プラスチックごみの多くは川から海に流れ込む。その総量の約90%は、わずか100本余りの川から排出されているとの推計があり、その多くはアジアに集中している。これらの川の河口がある国について、国内総生産(GDP)の推移に伴ってプラごみの排出量も増えると仮定。2010年時点の年間200万トン程度を軸に計算し、これまでの約60年間に約2500万トンが海洋に流出していると推計した。この数字には、漁業から発生する海洋ごみも含む。

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プラスチックごみであふれるインド・ムンバイのビーチ=7月30日(AP)

 

海洋プラごみの内訳が判明

 

次に、この2500万トンを全世界の海に流すシミュレーションを行った。シミュレーションには、大きなプラごみが砕けてマイクロプラスチックになっていき、微生物に付着して海底に沈んだり、今の技術では採取や観測ができないほど微細になったりしていく過程を組み込んだ。

 

プラごみに見立てた仮想粒子が海流や波、風で移動し、沈んだり細かくなったりして姿を消す様子を再現し、全世界の海で動きを追跡した。

 

その結果、660万トンは目視できるサイズのプラごみとして、180万トンはマイクロプラスチックとして漂流と漂着を繰り返していることが分かった。生物が付着して重くなって海底に沈むなどして、海岸や海面近くから姿を消したものが1680万トンに上ると推計された。

 

これらの数字について、世界の海岸や海表面で実際に観測されたプラごみの重量で検証したところ、現実の海の状況をシミュレーションがよく表していることが確かめられた。

 

海洋プラスチックがどこにどのくらい運ばれるのか、その内訳を重量ベースで明らかにしたのは世界初の成果だという。

 

 

5億トンが行方不明

 

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一方、適切に処理されず環境中に漏れているプラごみが年間3000万トンに達するという推計がある。こちらについてもGDPの推移を当てはめて計算すると、これまでに5億トンを超えるプラごみが環境に漏れだしていると分かった。海洋の2500万トンはその4.7%程度に過ぎず、ほとんどのプラごみが陸上で行方不明になっていることが示唆された。一部は、現状では観測できない数百マイクロ(1マイクロは1000分の1ミリ)メートル以下の「微細プラスチック」となって、環境中に散乱したり、大気を浮遊したり、海洋に流出している可能性がある。

 

磯辺教授は「陸にレガシー(遺産)としてプラスチックごみがたまりにたまっていることになる。それらが今後、じわじわと海へ出ていくこともあり得る」と指摘する。

 

海洋プラスチックごみの削減に向け、世界中でプラスチックの使用量を抑える対策が実施されている。しかし、陸域が膨大なプラごみの貯蔵庫になっているなら、使用量をどれだけ減らせばよいのかを考慮する前提の数字が変わってしまうことになる。

 

また、プラごみは海洋の環境や生態系に影響を与える点が主に問題視されてきたが、陸でごみがどこへ行っているのか、陸域の生態系や大気や土壌などの環境にどのような影響があるのか、評価していく必要も出てくる。

 

SNS「ピリカ」のスクリーンショット

 

街中のプラごみ量の把握という試み

 

陸に捨てられたプラごみの行方を探ろうと、磯辺教授らは、スマートフォンのアプリを使って、プラごみの画像を収集する市民参加型の研究プロジェクトに取り組んでいる。

 

ゴミ拾いの記録を投稿するSNS「ピリカ」で、ごみを撮影すれば、画像が日時や位置情報とともに記録される。そして、システムがレジ袋やペットボトルといったごみの種類や量を自動判別する仕組みだ。陸域でのプラごみの現状を定量的に把握できるデータを集める。

 

報告されたデータは、実際に落ちているごみの総量を推計する計算モデルを構築する基礎的なデータになると期待される。ごみがどのように残り続けるのか、あるいは細かく粉砕されて散らばっていくのかなど、さまざな分析に使える可能性がある。

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磯辺教授は、「街にペットボトルが何本、レジ袋が何枚捨てられているか誰も答えられない。これまでデータが全くなかったからだ。出荷量に対してどのくらいが環境中に漏れてしまうのかなども見えるかもしれない。たくさんの人にぜひ参加してもらいたい」と話した。

 

ピリカのアプリをウェブサイト(https://sns.pirika.org)からダウンロードすれば誰でも参加できる。プロジェクトは2025年3月末まで実施予定。

 

筆者:松田麻希(産経新聞)

 

 

2022年4月9日産経ニュース【びっくりサイエンス】を転載しています

 

この記事の英文記事を読む

 

 

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