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【主張】債務の罠 中国への警戒感共有せよ

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ロイター通信のインタビューに答える
スリランカのウィクラマシンハ大統領
=8月18日、コロンボ(ロイター)

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経済危機に瀕(ひん)したインド洋の島国、スリランカのウィクラマシンハ大統領が日本に対し、債務の再編協議などで混乱を収拾してほしいと依頼する考えを表明した。

 

危機を招いた最大の要因は前大統領一族による政治の私物化だが、それを支えたのは中国の資金だ。スリランカは返済能力を超える中国の融資で借金漬けとなり、最後には国家の権益を譲り渡して返済に充てる「債務の罠(わな)」に陥った典型例といえる。

 

岸田文雄首相は、中国の軍事や内政面での影響力排除を条件にして、スリランカに積極的に手を差し伸べるべきである。同国は食料不足やエネルギー不足で苦境に陥っており、一刻の猶予もない。

 

スリランカの危機脱却に対する協力を通じ、わが国と中国の途上国援助や融資の理念などがどう違うかを示してほしい。

 

アフリカ北部のチュニジアで閉幕した第8回アフリカ開発会議(TICAD8)の基調講演で、岸田首相は「人への投資や成長の質を重視している」と述べた。

 

日本は途上国に対し、施設や物品などのハード面だけでなく、人材育成などソフト面にも配慮する支援を実施してきた。途上国側のニーズをくみ取った、わが国の支援には定評がある。

 

2022年1月9日、スリランカを訪問した中国の王毅外相(左)と腕を組む、当時のマヒンダ・ラジャパクサ首相(元大統領)。お互いの強ばった表情が、微妙な関係を物語っている=コロンボ(AP)

 

いま途上国で問題になっているのは、中国の巨額融資にひかれる政権や、放漫財政や人権軽視などで厳しい注文を付けられるのを避ける政権が少なくないことだ。

 

このため、TICAD8では成果文書で、中国の支援手法に対抗する姿勢を明確にした。「国際ルールとスタンダードを順守する健全な開発金融が重要」と指摘したうえで、「不公正で不透明な資金調達に依存しないで済む環境」を強調した。極めて妥当である。

 

8月18日、スリランカ南部ハンバントタ港に寄港した中国の調査船「遠望5号」(AP)

 

スリランカ南部のハンバントタ港は前大統領一族が主導し、中国の援助で開発が進んだ。ところが金利負担が重くなった政府は5年前、債務返済に代えて中国に対し、99年間にわたる同港の運営権を譲渡した。その港に今月、中国軍傘下の調査船が入港し、大きな騒ぎに発展した。

 

中国側は、債務返済の代わりに権益を得た各国の港湾施設について、「軍事利用はしない」としてきた。だが、結局は軍事拠点づくりであることが判明した格好だ。中国の海洋覇権への警戒感を多くの国と共有する必要がある。

 

 

2022年8月30日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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