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下落止まらぬ人民元相場 金融危機へ発展の恐れも

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中国の通貨、人民元の対ドル相場下落が止まらない。直接の原因は外国の投資家の中国債券売りと資本逃避であり、金融危機を招きかねない。

 

グラフは昨年12月以降の外国投資家の中国債券保有残高のドル換算額と、人民元の対ドル相場の推移である。左側の目盛りで表示される中国債券は不動産開発企業などが発行する社債や地方政府債が大半を占める。多くは元建てである。右側の目盛りの人民元レートは下方が元安、上方が元高である。中国債券と元相場のトレンドは今年2月以降、同時並行して下がり続けている。6月の外国の中国債券保有残高は1月に比べ、約1200億ドル減った。背景は何か。

 

北京オリンピック開幕前に行われた中露首脳会談(ロイター)

 

2月4日には習近平中国共産党総書記・国家主席とロシアのプーチン大統領が北京冬季五輪開幕時に会談し、両国間の限りなき協力関係樹立で合意した。同月24日にはロシア軍がウクライナ国境を越えて侵略戦争を開始し、米欧日は直ちに金融を中心とした対露制裁を発動した。米国は中国が対露支援するなら2次制裁を適用すると通告した。3月には米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げに転じ、5、6、7月と大幅に追加利上げした。

 

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対中2次制裁の恐れと米中の金利差の拡大はいずれも、外国からの債券、株式を含む対中証券投資のリスクを高め、投資の引き揚げを誘う。米中の金利差拡大だけでも元安が進む。外国人投資家は元安で元建て証券のドル換算額が目減りするので投資を引き揚げるからだ。

 

グラフは残高ベースだが、外国人投資家の月ごとの中国債券の買いから売りを差し引いたフローベースの純投資はどうなっているのか。

 

ワシントンの国際金融協会(IIF)によると、債券は3月に307億ドルの売り越しに転じて以降マイナス続きで、7月までの合計で836億ドルのマイナスである。

 

外国人投資家の行動は投資収益を考慮した合理的判断によるが、それは既得権層が大半を占める中国の大口投資家も同調するとみてよい。共産党幹部の一族であろうと、損は避け、もうかることだけを考え、中国市場での資産運用が不利と見れば、政府による資本規制の隙間を見つけて海外に資産を移す。それが非合法の資本流出、すなわち中国特有の資本逃避である。その規模はどの程度か。

 

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中国側統計によると、今年前半の貿易など経常収支黒字額は1690億ドルに上る。この黒字分は中国人民銀行が吸い上げて外貨準備に加算されるはずなのだが、この間の外準は1790億ドルも減っている。つまり、合計で3480億ドルもの資本が外部に流出していることになる。この資本流出には当局が許可する合法的な対外投資が含まれるが、外国人投資家の動きから推測すれば、かなりの部分を資本逃避が占めているはずだ。

 

今後、人民元相場はどうなるか。5、6月は、新型コロナウイルスの感染拡大の完全阻止(ゼロコロナ)のために上海などでロックダウン(都市封鎖)が行われて経済活動が停滞した。その影響もあるだろう。

 

中国で、不動産市況悪化により開発業者が資金繰り難に陥り、建設工事が中断するマンションが全土に広がっている。北京市郊外のマンション建設現場。重機は動いていなかった=8月2日(三塚聖平撮影)

 

しかし、より大きな要因がある。ウクライナ戦争の長期化、米金利のさらなる上昇による米中金利差の一層の拡大に加え、住宅バブル崩壊リスクの高まりである。

 

本欄とは別の本紙拙コラム「経済正解」の8月6日および20日付で詳細に説明したように、中国政府と中国人民銀行は2021年初め以来続く、住宅相場下落や不動産開発投資の低迷に対し、財政・金融面での対策がとれないままだ。米FRBは住宅バブル崩壊が引き起こした08年9月のリーマン・ショック後、ドル資金の大規模な量的拡大で立ち向かって大不況に陥らずに済んだが、中国特有の通貨・金融制度ではそれは不可能だ。人民銀行は外貨準備の増加規模に応じて元資金を追加発行するが、外準は大きく減り続けている。

 

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外準を増やすためには外国からの対中証券投資増や対外貿易黒字の拡大が必要だが、外国の対中投資は逆に減り続けている。輸出も米国などの景気減速のために伸びそうにない。

 

残る手段は人民元の切り下げによって中国での生産を有利にすることだが、そうなると外国からの証券投資引き揚げと資本逃避は一段と加速するだろう。

 

15年夏の人民元の切り下げでは資本逃避が急増した。今回はさらに金融危機、経済の全般的混乱へと発展しかねない。本紙25日付朝刊によれば、ホンダなどが部品供給網の脱中国の検討を始めたが、「チャイナリスク」の増大からみて、産業界全体が中国市場依存を見直すべきなのだ。

 

筆者:田村秀男(産経新聞)

 

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8月28日付産経新聞【日曜経済講座】を転載しています

 

この記事の英文記事を読む

 

 

 

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