【主張】ロシアの極東演習 侵略の渦中に言語道断だ
中印などが参加するロシアの大規模軍事演習
「ボストーク2022」を前に露極東で式典が行なわれた
=8月31日(露国防省提供、ロイター)
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ロシア軍はウクライナを侵略している最中に、極東でも軍事演習「ボストーク(東)2022」を続け、緊張を煽(あお)り立てている。演習地域にはロシアが不法占領する北方領土の択捉・国後両島が含まれている。言語道断というほかない。
極東ロシア軍の部隊はウクライナ侵略に駆り出されており、参加兵力は公称5万人だ。4年前の前回30万人より減ったが、参加国は中国やインドを含む過去最多の14カ国である。
中国軍は陸海空3軍が初めてそろった。3日には中露の軍艦6隻が北海道・神威(かむい)岬の西約190キロの日本海で、機関銃射撃訓練を実施し、4日未明には礼文島の西方から宗谷海峡へ移動した。
松野博一官房長官は「重大な関心をもって注視している」と述べたが、北海道を威圧するような軍事行動は断じて許されない。
ウクライナ侵略後、「ロシアは北海道にすべての権利を有する」などと妄言を公に口にするロシアの政党党首も現れた。日本は北方の警戒を怠るべきではない。
元来、ロシアは9月2日を「対日戦勝記念日」としていた。それを2年前に1日ずらし、中国が「抗日戦争勝利記念日」とする3日に合わせた。中露の連携を象徴する日付である。
先の大戦末期にソ連は有効だった日ソ中立条約を一方的に破って対日攻撃を始め、北方領土まで軍事占領した。不法な宣戦布告をしてきたのはソ連で、その行動に一分の理もない。「戦勝記念日」を設定されるいわれはない。
政府は、虚偽の記念日に厳重抗議し、取り消しを要求すべきである。中露両国は昨年の秋、艦隊を日本一周させるなど軍事的協力を強めている。「戦勝記念日」に軍事的威嚇を実行したのは「歴史戦」でも手を結んだ証拠だ。
ロシアは演習に日米豪印の4カ国の枠組み「クアッド」に参加するインドも引き込んだ。インドは主要兵器の半分をロシアに頼り、軍事的に迎合せざるを得ない事情がある。中露には、両国の軍事的暴発を抑止しようとしている米軍を牽制(けんせい)する共通の思惑もある。
演習は7日までの予定だが、プーチン大統領は6日にウラジオストクで演習を視察し、7日に演説するという。西隣の独立国家を一方的に侵略した暴君に、北方領土を含む極東演習を正当化する言葉など何もないはずだ。
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2022年9月6日付産経新聞【主張】を転載しています
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