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不協和音と民族葛藤に覆われたフィラデルフィアの「平和広場」公聴会

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平和広場委員会が提出した広場のデザイン。(PPPC&TEND提供)

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米国東部ペンシルベニア州フィラデルフィア市の芸術委員会は9月19日(現地時間)、慰安婦像建設を中心とする「フィラデルフィア平和広場」新設案件に関する公聴会をリモート開催した。

 

芸術文化創造経済庁の後援を受けたこの計画は2021年2月、フィラデルフィア平和広場委員会のチョ·シンジュ委員長が慰安婦像を含む「平和広場」を新築しようと市芸術委員会に提出した。 平和広場委員会側は草の根募金を通じて慰安婦像を製作し、フィラデルフィア市クイーンビレッジに広場が完工後、指定された場所に像を設置して市に寄贈するという計画だ。

同案が公開されるや、住民と市民団体が激しく反発した。反対派は特に、潜在的な民族間紛争、そして現地の日本人および日系米国人に対する人種差別を憂慮した。 一方、賛成派は、慰安婦像によるアジア人に対する憎悪犯罪やいじめが顕著に増加したという根拠はないと断定する。

 

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2020年6月24日、ソウルの日本大使館前に設置された慰安婦像の撤去を求める保守系市民団体から像を守ろうとして、像の周囲に座り込んだ学生ら(名村隆寛撮影)

 

韓国側の主張

 

チョ委員長はこの日の公聴会で、女性に対する戦時中の犯罪を許さない国際的な動きに参加することの重要性を訴え、反対派が主張する「嘘の非難」に振り回されないことを要請した。 そして、反対派が「平和広場」建設を阻止するために、恐怖心を煽り、醸成するなどの多様な戦略で世論に訴えていると主張した。

 

また、彼女は広場の建設目的について「長い間、深刻化してきた分裂と不信を解消するのに役立つ議論を奨励することにある」と話し、慰安婦像を通じて「性暴力の歴史を知らせ、東洋人とその他の民族間の調和を作り出すことを希望する」とした。

 

続けて「人類は数多くの共同体と国家が歴史と向き合い、本当に治癒され、統一され、強くなった事例を目撃してきた」として再び広場建設の必要性を強調した。

 

日系アメリカ人の視点

 

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次いで、フィラデルフィアの日本人協会を代表する人権派弁護士、エドワード·S·マズレック氏は、同計画に反対する立場を示した。

 

マズレック氏は、その像が「平和と人権を象徴する」という主張は口実に過ぎず、「日本と日本国民に対する反日感情と軽蔑を助長するためのものだ」と語った。

 

同氏は「この銅像は、多様な政治的立場に対する健全な討論をもたらす公的芸術作品ではなく、特定民族だけを名指しにしている。 このような銅像を公共の場所に建てるなら、フィラデルフィア市は韓国側に立っていることを強く暗示することになる」と釘を刺した。

 

また、この問題は、フィラデルフィア市の公共芸術政策に反すると主張した。

 

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その政策は、次のような規定を含んでいる。 1) 寄贈された記念建造物は、その内容や芸術家と設置場所の間の強いテーマ的または歴史的関連性がなければならない。 2) 記念建造物の内容がフィラデルフィアに重要な貢献をしたことを証明しなければならない。

 

マズレック氏は、「平和広場」は上記の前提条件を全く満たしていないと述べた。

 

今回の公聴会で最も議論となった慰安婦像の横に刻まれる碑文の内容。日本語訳は以下の通り。
「平和像 この像は、1931年から1945年に日本帝国軍による性奴隷制の被害者となったアジア、オセアニア、欧州の何十万もの少女と女性を追悼するものです。1991年に生き残った者たちが恥辱と沈黙の連鎖を断ち切り証言しました。そして過去を直視し平和を築き、これからの世代の女性たちを護るよう世界に呼びかけました。フィラデルフィア平和プラザ委員会」
芸術委員会が同計画を承認した場合、上記のような、または似たような内容の碑文が設置される予定だ。 聴衆の一部は、加害国と被害国をあえて指摘する必要があるのか疑問を提起した。 ある人は、韓国軍がベトナム戦争で起こした女性に対する戦時性犯罪も追加されなければならないと指摘した。(PPPC提供)

 

異なる意見で対立は悪化する

 

同日の公聴会では、聴衆にも約2分ずつの発言機会が与えられた。 発者の大半、すなわち31名中23名が、人々の間の葛藤を招く問題▽事業による不利益▽関連国家間の紛争の増大などを理由に、慰安婦像の設置に反対した。

 

韓国の落星台経済研究所の李宇衍(イ・ウヨン)研究委員も、次のように反対の論陣を張った。「慰安婦が10代前半である、日本軍によって性奴隷として強制的に連れて行かれたという推進派の主張を裏付ける歴史的史料は確認されていない」と述べた。

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さらに、「慰安婦の女性たちは20代半ばの性労働者であり、正当な賃金を支給され、契約により帰国した」と、李研究委員は主張した。

 

チョ·シンジュ委員長は、参加者が提起した多様な反対意思に丁重に答えたが、李研究委員ほか数人の聴衆の慰安婦「性奴隷説」に対する反論にはノーコメントを貫いた。

 

李研究委員は続いて、「第3国間の外交および歴史紛争に他国の自治体が介入するのは適切でない」とし、市当局が自分の権限を超えないよう注意を呼びかけた。「私は米国市民が韓国人たちの間、そして韓国と日本の間にある歴史的葛藤に介入しないことを要請する。 この銅像は平和とは何の関係もなく、これを立てることによって(両国間の)葛藤がさらに悪化するだろう」と付け加えた。

 

落星台経済研究所の李宇衍研究委員(吉田賢司氏提供)

 

推進者は少数派

 

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約4時間にわたる公聴会に耳を傾けた李研究委員は、「銅像設置支持者」が目立って少ないことに驚きを禁じえなかった。だが、支持陣営の中には、映画監督のミキ·デザキ氏(映画「主戦場」制作者)とドイツコリア協議会代表(ベルリン市の慰安婦像設置団体)のハン·ジョンファ氏など、知名度のある発言者もいた。

 

デザキ氏は同日、記念物の説明文から「日本軍」という記述を削除すべきだとする反対派の主張に反論して、「性暴力に関する普遍的な記念物を建てようとする試みにおいて、日本軍と慰安婦体制に対する言及を回避することは歴史の白紙化の試みだ」と主張した。

 

そして、「真珠湾攻撃被害者に対する記念碑を建てながら実際の被害者と加害国家に言及せず、単純に殺人は悪いとだけ話すのと変わらない」と指摘した。

 

彼はまた、自身の学問的立場と専門性を説明するのに多くの時間を費やした。 特に彼が2018年に作成した、「扇動的慰安婦ドキュメンタリー」として広く知られている映画「主戦場」を紹介し、自身の専門性を強調した。ところが、2019年には、その映画に出演した7人の日本の知識人と活動家たちがデザキ氏を倫理違反で提訴し、上映禁止の仮処分を申請した経緯がある。

 

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皮肉なことに、慰安婦問題を長い間研究してきたというデザキ氏は公聴会で、慰安婦の歴史と学問的議論については言及を避けた。

 

慰安婦像は本当に人々の葛藤を癒すのか

 

平和広場委員会は米司法省の記録を引用し、少女像と特定民族に対するヘイト感情や人種差別との相関関係が微弱だと主張した。しかし、多くの現地人が肌で感じていることは違うのだ。彼ら、彼女らは少女像によって本人の家族、友人、そして隣人たちが体験したいじめと言葉による暴力、それらから受けた癒やされていない心の傷を直接目撃したからだ。

 

これらの被害者は元慰安婦の証言と同様に、自分たちの声も徹底的に検討され、意思決定の過程に反映されることを望むだろう。

 

慰安婦像建設に反対する別の団体であるフィラデルフィア·ジャパン-アメリカ·ソサエティは、私とのインタビューで次のように述べた。

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「平和広場委員会は非常に矛盾していると考えている。 ある面では人々を誤導していると感じる。 もし彼らが主張した通り、平和広場が女性に対する戦時残酷行為を人類普遍の立場で糾弾し、時間、場所、国籍に関係なくすべての犠牲者を追慕する空間なら、『日本軍』という名詞をそこに入れる理由がないだけでなく、銅像が韓国の伝統衣装を着ていることも道理に合わない。」

 

これまで住民が韓国人コミュニティと構築してきた健全なネットワークが今回の事態によって取り返しのつかないほど毀損されるのではないかと心から憂慮していた。

 

このような慰安婦像が生んだ社会的葛藤は、地球の反対側にあるソウル市鍾路区でも見られる光景だ。毎週水曜日、正義記憶連帯のいわゆる「水曜デモ」と鍾路区に設置された慰安婦像撤去を要求する団体間の葛藤は激しく、戦争を彷彿とさせる。 フィラデルフィアの住民たちが本当に避けたいのは、このような不必要な紛争の種ではないだろうか。

 

フィラデルフィア芸術委員会はいずれにせよ非常に困難な状況に直面している。同市は最近、マルコーニプラザにあるまた別の銅像によって市民と摩擦を起こし、法廷闘争まで経験した経験がある。 しかし、決定権は完全に芸術委員会にある。

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9人で構成された同委員会はすでに2021年2月、満場一致で「平和広場」の基本構想を承認している。そして、10月12日に最終表決をする予定だ。 当日に公聴会は開かない予定だ。

 

筆者:吉田賢司(ジャーナリスト)

 

 

この記事の英文記事を読む

 

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