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【主張】日中国交50年 関係を根本から見直せ 経済・学術界も安保の視点を

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日中共同声明の文書を交換する
田中角栄首相(左)と中国の周恩来首相
=1972年9月29日、中国・北京の人民大会堂

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日本と中国が国交を正常化して50年の節目を迎えた。

 

両国の関係は、当初の熱狂的ともいえる友好ムードとはうってかわって、冷え込んでいる。

 

その最大の理由は、途上国から世界第2位の経済大国にのし上がった中国が、軍事力の増強を進め、覇権主義的なふるまいを隠さなくなったからだ。

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日本は対中関係の見直しが必要だ。自国と東アジア、インド太平洋地域の平和を保つために、防衛のみならず、経済、学術分野も含めて対中抑止に努めるべき時代になったことを肝に銘じたい。

 

 

肥大化を日本が助けた

 

両国は東西冷戦のさなか、隣国同士でありながら外交関係がない問題を是正した。それにより、差し迫るソ連の脅威に連携して対抗できた。その戦略的狙いは間違っていなかった。

 

一方、戦争の傷を癒やし、中国との安定した友好を築こうとした日本の希望はかなわなかった。

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日本は長期にわたり中国の経済発展を後押しした。だが中国共産党政権は、日本の支援も利用して国力を増すにつれ、強面(こわもて)の姿勢を隠さないようになった。

 

日本固有の領土である沖縄県尖閣諸島の奪取に野心をみせ、海警局船の領海侵入や接続水域での徘徊(はいかい)を常態化させた。台湾併吞(へいどん)を視野に入れ、これに懸念を示す日米などの国際社会も威嚇する。

 

北京の釣魚台迎賓館で開かれた日中国交正常化周年の記念式典=9月29日(共同)

 

中国が対外強硬姿勢や国内の人権弾圧を改めるべきは当然だ。同時に日本には、平和を脅かす「異形の大国」が育つのに手を貸した痛切な反省が必要である。

 

日本は、約3兆6600億円もの対中ODA(政府開発援助)を供与した。だが、中国側は自国民に日本の協力を広く伝えず、日本政府もそれを許した。中国は日本の首相の靖国神社参拝を批判する内政干渉を続け、日本国内にはそれに呼応する勢力が存在した。

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日本の最大の痛恨事は、1989年の天安門事件を巡る対応だ。民主化を求める学生を戦車で蹂躙(じゅうりん)する弾圧を行った中国は国際社会の制裁を受けた。ところが日本政府は真っ先に経済支援を再開し、孤立からの脱却を助けた。

 

専制主義のまま再び経済成長を始めた中国はその後、世界貿易機関(WTO)に加盟した。日米欧はこれを容認したが、中国は自由貿易の恩恵に浴しながら、不公正な貿易慣行は改めなかった。

 

トランプ米前政権のペンス副大統領(当時)は2018年の演説で、歴代の政権はWTO加盟などで「中国の自由化」を期待したが「その希望はかなわなかった」と述べた。「(米国家安全保障戦略で)中国に新たなアプローチを採用した」とも語った。中国と国交を結んだニクソン米大統領以来の対中関与政策からの決別だ。対中抑止へと舵(かじ)を切るこの基本路線はバイデン政権も踏襲している。

 

日中国交正常化50年記念レセプションで記念撮影に臨む(左から)中国の孔鉉佑駐日大使、経団連の十倉雅和会長、自民党の福田康夫元首相、林芳正外相、二階俊博元幹事長、河野洋平元衆院議長=9月29日午後、東京都千代田区(川口良介撮影)

 

政治リスクに向き合え

 

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これは本来、日本こそ語るべきことだった。日本政府が今年12月に向けて防衛力の抜本的強化策の検討を進めているのは、対中抑止を図って平和を守るためだ。

 

この抑止は防衛努力だけでは足りず、経済界や学術界の協力も欠かせない。だが日本は、その意識や対応が遅れている。もっと対中リスクを踏まえた取り組みを強めなくてはならない。

 

隣り合う経済大国である中国との全面的なデカップリング(切り離し)は非現実的だ。それでも経済安全保障の視点を抜きにした対中ビジネスはあり得ない。

 

中国が2010年、尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件を受けた事実上の制裁措置としてレアアース(希土類)の対日輸出を規制したのは一例だ。外資企業の技術を不当に得ようとする中国の姿勢も変わらない。中国には企業に情報提供を強制できる法律もある。

 

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新疆ウイグル自治区で疑われる強制労働などの人権問題も見過ごせない。日本企業が中国事業でこれに加担したとみなされれば、欧米市場から排除されかねない。

 

経済安保の観点では、軍事転用が可能な機微技術を育成し、その国外流出を防ぐことも重要だ。ところが日本学術会議が、軍民融合を掲げる中国側との協力促進を図ることを目的とした覚書を締結しているのはどうしたことか。

 

国交正常化50年を機に日本がなすべきことは、こうした問題に対処できるよう対中関係を根本から見直すことである。それを抜きにした日中友好などあり得ない。

 

 

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2022年9月29日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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