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財務省主導の防衛国債反対論を排す

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財務省、国税庁 =2021年11月11日、東京・霞が関(©産経)

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ミサイル発射に邁進する北朝鮮の金正恩総書記、再びウクライナ全土攻撃に走るロシアのプーチン大統領、〝終身皇帝〟になる中国の習近平国家主席。異形の国々のもたらす国防の危機にわが国は直面している。わが国の課題は、①憲法改正で自衛隊を警察力の枠から引き剥がし、通常の軍とすること②軍事力を強化すること―である。①の実現に時間がかかるいま、岸田文雄首相の目下の課題は②である。

 

官邸に入る鈴木俊一財務相=10月4日午前、首相官邸(鴨川一也撮影)

 

増税は日本経済を滅ぼす

 

戦後70年以上、日本国全体が軍事に背を向けてきたツケは深刻で、自衛隊は人員、武器装備、修理、備蓄、部品など、どの分野も不足ばかりで、継戦能力が疑問視される。一連の空白を埋めるため、政府は5年で国防費を倍増する。

 

国の基本は健全な経済と強い軍だ。自らの内閣を「政策断行内閣」だと誇る岸田首相は、日本が平時ではなく有事にあるとの認識をまず明確にし、国防体制の根本的転換を実現しなければならない。有事下で経済と国防を両立させるには、わが国経済が未だデフレから脱却できていない事実を踏まえ、防衛費増は増税でなく防衛国債の発行を以てすべきだと言った安倍晋三元首相の助言を受け入れるのが合理的だろう。

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だが、政府内では財務省主導でプライマリーバランス(PB)を重視し、防衛国債の発行に反対する動きが加速中だ。9月26日、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)で鈴木俊一財務相が防衛力強化に関して「赤字国債に依存すれば有事の際に経済を不安定化させる」と語り、防衛国債発行論を牽制した。

 

9月30日にはまたもや財務省主導で「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」が開かれ、防衛力強化のための財源を安定的に確保すること、つまり増税の重要性が強調された。財務省はこれ以上の国債発行は国債の暴落を引き起こすなどと警告するが、未だデフレ下にあるわが国経済は新たな増税の負荷に耐えられないだろう。

 

 

8000円で済む国民の負担

 

産経新聞特別記者の田村秀男氏は、わが国の企業の内部留保が6月末時点で1年前に比べて49兆円増え、全体で約500兆円となったこと、家計の金融資産のうち現預金は1000兆円で、企業と個人で1500兆円のお金がわが国にあることを指摘する。

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国防費を5年間で国内総生産(GDP)比2%にするには、ざっと見て5年間で5兆円、年に1兆円増やすことが必要だ。わが国の人口は1億2600万人、1兆円なら1人当たり8000円弱の国債で賄える。現在国民1人当たりの国防費は、日本人は4万円、米国人は21万円、韓国人が12万円、英国人が10万円だ。

 

企業と国民が力を合わせて自衛隊を強くし、経済も順調に成長させることができれば、やがて増税にも耐え得る強い経済になるのは間違いない。岸田首相は財務省のPB重視路線に乗ってはならない。

 

筆者:櫻井よしこ(国基研理事長)

 

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国家基本問題研究所(JINF)「今週の直言」第974回(2022年10月11日)を転載しています

 

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